アジアで織布の技術指導、そのワケは

2015/06/15 11:34 更新


《インタビュー・辰巳織布社長 辰巳雅美さん》東海染工のインドネシア協力織布工場に技術指導に通っている。設備は新しくても技術に乏しかった工場に日本の技術を教え、生産性の大幅アップに成功した。国内市況が低迷するなか、日本の繊維製造業の立ち位置を探る。

◇◇◇

 ――インドネシアの技術度は。

 通い始めた当初は日本の40年前のレベルでした。工場にあるエアジェット織機500台は、機械は弊社より新しかったのですが、技術が追いついておらずA反率は3~4割程度。現地は粗悪品でも購入する市場があり、技術向上を目指す風土が無かったようです。

 ――現在のレベルと今後は。

 2カ月に1回通い、機械の整備やサイジング方法、何よりも、自分の頭で考えることを教えました。働き手は大変真面目。データ採取や管理は緻密(ちみつ)でしたし、口頭で伝えた指示もきっちり実行してくれ、私も彼らを育てたいという気持ちが大きくなっていきました。1年半かけ、今では9割がA反になりました。次は60、80番の細番手綿織物など、より難しい素材に挑戦する予定です。

 ――海外への技術指導に迷いもあった。

 ただでさえ国内産地が縮小するなか、海外へ技術を渡すことは、自らの首を絞めることにつながると否定的でした。しかし八代芳明東海染工社長から2年にわたって説得され、考えが変わりました。既に生産の多くが、中国をはじめ海外に移転しています。国内の技術を守るだけではなく、インドネシアに技術を教えることで、中国に持っていかれた分を取り戻すような能動的な姿勢が必要です。

 今、当社は国内自社工場と海外への技術指導によるダブルインカム。日本の技術力を生かし、海外と共存することが国内製造業の残る道だと考えています。



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