4月に消費税免税店制度が改正され、これまで専門店が独自に行う必要があった免税販売手続きを、SCや商店街などが設置する一括して免税販売手続きを行う専用カウンター(免税カウンター)に委託できるようになった。免税カウンターを導入すれば、訪日客は買い回る場合でも一度の手続きで済ますことができ、複数の店舗で購入した商品を合算することで免税対象金額に達しやすい。専門店は手続きにかかっていた時間や人件費を削減できる。双方のメリットが大きいと見て、免税カウンターを導入するSCや商店街が広がりつつある。
訪日客の回遊性高まる
SCでは5月11日、ルミネがルミネエストやルミネ新宿、有楽町など首都圏の5館に設置した。5館で約730の免税店のうち、カウンターに委託した店舗は6月19日時点で約280店。運用当初は82店だったが徐々に増えている。対応店舗が増えていることに伴い、免税カウンターでの手続き件数は5月11日~5月末までの3週間で約1400件だったが、6月は19日までで約2500件となった。イオンモールは成田が5月8日、沖縄ライカムが5月18日にそれぞれ設置した。成田は委託型免税店が約10店、沖縄ライカムは約40店で10店舗が申請中。沖縄ライカムでは運用開始からの1カ月で免税カウンターの利用件数は約730件だった。
両社とも「複数のショッパーを持って買い回る訪日客が増えている」と手応えを見せる。特に化粧品など訪日客に人気のショップでは「商品梱包(こんぽう)や手続きに人手が割かれ長い行列ができたが、委託型免税店に移行してからは接客に集中できるようになった」という。さらに免税カウンターでは外国語が話せるスタッフを充実させているため「館内や街の情報など様々な問い合わせがある」といい、「免税販売手続きにとどまらないサービスを行い、満足度を高めてリピーターにつなげる役割を担う」(新井良亮ルミネ社長)とする。
課題はテナントが免税カウンターに委託する場合、個別に税務署へ申請する必要があり、委託後は自店で免税対応ができない点だ。SC内では委託型免税店と自店で対応する一般型免税店が混在し、訪日客の混乱を招くケースもある。SC、テナントの相互理解を深め考えを一致させる必要がある。
商店街、百貨店連携して
地域の商店街が百貨店内に免税カウンターを設置する動きも出てきた。岡山市中心部の表町商店街とロマンチック通り商店街は5月28日、天満屋岡山本店に免税カウンターを導入。北海道・旭川駅前の旭川平和通り商店街振興組合は6月1日、西武旭川店に設置した。商店街と百貨店が連携することで回遊性を高め、新しいにぎわいの創出を目指す。
いずれも委託型免税店は約10店舗で、開始間もないこともあり利用件数は1日あたり数件のペースだが「エリア全体で訪日客を歓迎するムーブメントが生まれつつある」(天満屋岡山本店)。
今後は〝免税商店街〟として訪日前、訪日後それぞれの認知度を高めることが急務だ。旭川は百貨店と商店街とのスタンプラリーや、近隣ホテルや空港などでの告知活動を強化する考え。岡山にはシンガポールの旅行会社が視察に訪れるなど、海外への発信を始めている。免税対応だけでなく、商店街・エリアとしての魅力を高め、特色を明確に打ち出すことも欠かせない。