《視点》ぶれない芯

2021/12/16 06:23 更新


 業績について取材していた時だ。相手の言葉をノートに書きとめたら、「字が違うよ」と指摘された。地の底をさまようような状態が続いているのだから「底迷」と書くのだろうとずっと思い込んでいた。漢字の間違いを指摘され顔から火が出るほど恥ずかしく、以来、文字が判別できないほどの〝達筆〟でメモをとるようにしている。

 自分でも何を書いているのか分からないこともあるが、メモで大切なのは、ボイスレコーダーのような正確さではなく、その時の空気感をフラッシュバックする作用なのだと思う。相手が一番言いたかったことは、表情や仕草、抑揚などに表れる。メモはその時感じ取った印象を再現してくれればいい。それを芯にして、ぶれないように構成していけば伝わる記事になる。

 アパレル業界では情報管理にデジタルを活用して、購買促進につなげる取り組みが進化している。詳細な行動履歴を分析し、最適なアプローチを予測するのだ。ただ、客の心の動きを読み解き、次のアプローチを組み立てるのは、まだ個店の販売員の領域には達していない。

 履歴よりも商品を手に取った時の表情や仕草に、客の芯が表れる。ベテラン販売員はアプローチの芯をぶらさない。だから客に伝わる。

(原)



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