経営者や役員に取材するなかで、若手を中心に現場の意見を吸い上げるといった話を頻繁に聞く。いわゆる、ボトムアップだ。これまでトップダウンの強力な機動力で成長してきた企業でも、社長交代に伴って現場の声も柔軟に取り入れようとする考えが出てきている。
なぜ、今、ボトムアップなのか。核心はつかめていないが、自分なりの仮説はある。まず、コロナ禍がきっかけになったのは前提にあるだろう。そこに大きく影響しているのは、恐らく個人の変化。働き方が多様になって仕事の価値観も柔軟になり、キャリアの選択肢も広がった。組織への帰属意識が薄れたといえる。
そうなると、組織ひいてはその企業で働く意義が問われる。安定した収入や福利厚生は生活に最低限必要なものとして、今では、というか特に20~30代は自身のキャリアにプラスになる何かを本質的に求めているのではと、20代の記者自身に置き換えても思う。
気がかりなのは、成長意欲や向上心を満たすだけで社員の気持ちに応えられていると満足しないかということ。裁量ある仕事や活躍の機会だけでなく、年次を超えて対等に議論できる環境や透明性の高い評価も、企業で働く動機づけには必要なのではないか。社員のやる気を吸い取るのではなく、企業の原動力にできるのが理想。今後も動向に注目したい。
(麻)