「製造現場で学んだことを、店頭で独自の接客に生かしたい」。先日、大手デニムメーカーの工場で実施されたある小売業の新入社員研修を取材した。冒頭の意欲的なコメントは、この参加者によるものだ。この研修は、繊維産業が集積した産地である福山の特性を生かそうと今年から始まったもの。外部企業の新入社員研修や人材育成のため、多くの産地企業の協力によって実現した。今回は産地に滞在し、ジーンズの生産工程をすべて見られるようにした。
参加者に感想を聞いた際に予想外だったのが、外国籍の人もいたことだ。グローバル戦略を推進しているだけに、留学生も採用し、人材育成をしているのだと感心させられた。海外で活躍することになった場合、世界で高く評価される日本のデニム、ジーンズの製造現場で学んだ経験は大きな武器になる。
現在、このようにグローバルな人材採用・育成に注力するところが果たしてどれぐらいあるだろう。新卒採用は多少改善しているようだが、コロナ禍のダメージはまだ残っている。留学生への影響はなおさらだろう。毎年、ファッション専門学校生に実施している「就職意識アンケート」に書き込まれた留学生の複雑な声が頭をよぎった。
(畔)