《視点》入り口の作り方

2023/02/02 06:23 更新


 年末、新型コロナウイルスに感染した。家族と同居しているので、家庭内感染を避けて、都のホテル療養制度を利用した。

 療養したホテルは清潔感があり、インテリアもおしゃれで良いところだった。しかも、往路は都側の手配した車で送ってもらえて、長距離の移動も快適だった。無料だから悪かろうとのイメージが覆された。

 後日、知り合いにそのことを話すと「周りの感染した人たちは、ほとんどがホテル療養していない」という。理由は制度がよくわからないから。迎車があることなど知らない様子だった。

 利用した人としなかった人の違いは何か。私は感染を確認した医師から渡される書類に沿って申し込んだだけで、特別なことはしていない。しかし、療養できるホテルが住んでいる地域に無かったり、申し込みは電話のみで異なる相手と何度も通話する必要があったりと、ハードルは高かった。療養者は熱やせきなど症状に苦しんでいるのだから、制度を把握する前にあきらめる人もいるだろう。

 利用者の目線で入り口を作らなければ、どんなに良いサービスも広がらない。行政と民間の違いはあるが、接点の設計に大切なことは同じだ。

(稜)



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