「最近、消費者の環境への意識が薄れていると危機感を覚えているんです」とある洋品メーカー社長の言葉が頭の片隅に残る。この間の物価高で、より安価な商品を選ぶ消費者心理が強まっているという。環境に優しい商品は値が張るため、それを買いたくても買えないのが実情だ。総務省が1月20日に発表した22年12月の消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が20年を100として104.1で、前年同月比で4.0%上昇した。ガス代や電気代、食料品の値上げが響いた結果だ。物価が高くなる一方、中小企業を中心に賃上げの望みは薄く、悩ましい。
くだんの社長は、小売店の変化にも言及した。数年前はサステイナビリティー(持続可能性)への関心の高まりを背景に、環境配慮型の商品をトレンドとして求めたが、今では需要が少なくなり、売れないからと取引を打ち切る小売店もあるという。日々の営みに必死で未来を考える余裕などなくても、環境問題は日に日に深刻さを増す。考えたいのは、商品を買ってもらえないから売らないのではなく、買ってもらえる知恵を絞ること。不透明な時代は近視眼的になりがちだが、その商品が環境にも消費者にも企業にも、真に持続可能なものなのか、改めて考えてみたいものだ。
(麻)