アプリ上のチャットで、プロのスタイリストがあなた合うコーディネートを提案――。ネット関連事業の空色(兵庫県、中嶋洋巳社長)は21日、コーディネート提案チャットアプリ「プリモード」の本サービスを開始した。決済機能も備え、提案された商品を気に入れば、その場で買える仕組みだ。商品供給では、ジュンをはじめ大手アパレル企業が順次参加する。チャットのデータ解析による提案ノウハウや顧客情報の蓄積など、ウェブ接客ならではの可能性が注目される。
プリモードのアプリは、まず好きなスタイリストを選び、予算や購入目的などを登録。スタイリストが1対1のチャットの中でさらにユーザーのニーズを聞き出し、商品画像を添えてコーディネート提案する。アプリ内で購入された商品は、各ブランドからいったん都内の倉庫に集め、空色が発送する仕組み。商品が売れると、掛け率に応じた金額を空色がブランド側に支払う。
昨年12月からテスト運営していたが、「初めての合コンで着る」「仕事のプレゼンがあるので」など利用の理由はさまざまで、記念日のギフト需要もある。予算は3万円程度が多い。ユーザーは女性が6割、20代後半~30代半ばが中心で、提案に対する購入率は約10%。
本サービスではジュンと販売委託の契約を結び、同社の6ブランドの商品や在庫の情報を共有する。順次、有名セレクトショップや大手アパレルの参加も予定しており、ブランドに関係なくユーザーに合った商品を提案する。
アイテムの組み合わせ方が分からない、でも店頭での接客が苦手という人にも、適度な距離感で提案できるのはオンラインならでは。購入以降もユーザーとコンタクトを取りやすい。一方、リアル店と違い本人の姿が見えないため、ニーズの聞き出しには工夫が必要だ。フェイスブックと連動させ、本人の許可があれば顔写真などを見られるようにする。さらに、日本IBMと協力しチャットのデータを解析する。ユーザー層別のニーズの傾向を体系化し、スタイリング提案の精度や購入率のアップが期待できる。効率が上がれば、より多くのユーザーを接客することも可能だ。
サービス開始時でプロのスタイリストは約20人で、いずれ100人近くに増やす。ほかに、アパレル業界での接客経験がある人材などが「セレクター」として3人いる。iPhone用アプリからスタートし、年内に6万ダウンロード、3年後20万をめざす。
オンラインでのスタイリング接客サービスは、「米国ではここ数年で急成長している分野」と中嶋社長。9月ごろには台湾でもサービスを開始したいという。空色は13年創業で、プリモード立ち上げにあたり、昨年、日本ベンチャーキャピタルから1000万円、瀧定大阪から1億5000万円の出資を受けている。
同社はアプリ以外にも、ファッション企業の自社EC(電子商取引)サイト向けにプリモードの接客システムを提供する事業も行う。ウェブとリアルの連動が業界のキーワードとなるなか、セレクトショップや百貨店、ファッションビルなど複数の大手企業が興味を示しているという。