ショーと実売時期を縮める動きが盛ん
【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子通信員】16~17年秋冬ニューヨーク・コレクションで、新しいシステムを模索するショーのあり方が話題になっている。ショーで新作を発表してから半年後の販売という従来の仕組みを改めて、一部の商品をショーの後で販売開始するというものだ。顧客の〝すぐ欲しい〟に応えるビジネスの仕組みと新しいショーのあり方は、他のコレクションに影響を与えるのかどうか注目される。
量感たっぷり不気味なスタイル/マーク・ジェイコブ
マーク・ジェイコブスの会場に入ると、すべてが白い円形の空間になっている。そこに登場するのは不気味な、黒からグレーを中心にしたスタイルだ。ゴシックイメージのダークなメークに、ボリュームたっぷりのジャケットやドレス、足もとは編み上げの厚底ブーツ。
縦長のシルエットを強調しつつ、袖も着丈もずるずると長くしてフレアラインに仕上げていく。コートやスカートに立体的な刺繍やプリントで描かれるのは黒猫やバレリーナ、花といったモチーフ。ブリーチデニムのスカートもどこか人の顔が浮かんだような柄に見えてくる。
クラシックなツイードスーツやボリュームたっぷりのダウンジャケットには、不気味なフェザーがたっぷりと重ねられる。ひび割れたシアリングのボマージャケットもフレアラインに広がるボリューム感と長い袖。トレーンを引くチェックのコートはファーを象眼ではめ込みながら柄のピッチを変えていくという手の込み方。
ラグジュアリーな素材と手仕事をふんだんに取り入れながら、それをダークな気分の中に収めた。デザインは異なれど、その量感のデザインは16年春夏の「ヴェットモン」が作り出した流れを感じさせる。
コンセプチュアルな物づくりで定評のあるプロエンザ・スクラーは、クロスモチーフとレースアップのディテールを取り入れた。テーラードジャケットは、襟が交差してサイドのボタンで留めるようなデザイン。
ニットドレスはアイレットにひもを通したレースアップでトップとスカートがつながっている。ワークウエアのようなステッチを利かせたコートもレースアップのひもがアクセントとなる。ボトムは、タイパンツのような深いタックを入れたワイドパンツをコーディネート。
ショーの後半は1年前のコレクションで見たようなテープ状の生地をつないだドレスのシリーズ。18日から21日までソーホーの直営店でコレクションを販売したというが、このあたりの既視感のあるテープのディテールが中心だったのだろうか。
ラルフローレンはマスキュリンなパンツルックが充実した。柔らかなブラウンのカーディガンにゆったりとしたワイドパンツ、ブラウンスエードのパンツスーツなどブラウンを中心にしたスタイルだ。
パッチワークウールのコートやケープがナチュラルな色合わせとボリュームで温かみをアピールする。ショーの後半は、よりドレッシーなスタイル。ブルーベルベットのフロックコートや刺繍を入れたベルベットコートに白いフリルのシャツを合わせ、タイトなパンツでりりしい雰囲気に仕上げた。
カルバンクラインはテープやハーネス、襟のパーツアイテムといったディテールを取り入れた。パンツスーツにはハーネスのような布が垂れ下がり、ベアバックのドレスにもテープのディテールを飾る。
ファーの襟にレザーの太いテープを垂らしたパーツアイテムは、ドレスの上からストールのように着たり、コートと合体させてファー襟のコートのように見せたり。フロントとバックでチェックの柄を切り替えたドレスやファーの毛足をプリントしたドレスも。(写真=catwalking.com)