旭化成のスパンデックス「ロイカ」 リサイクル糸や生分解を拡充

2020/11/24 06:28 更新


 旭化成はスパンデックス「ロイカ」事業で、サステイナビリティー(持続可能性)や独自性をさらに追求し、積極的な設備投資を進める。ドイツで先行したリサイクル糸「ロイカEF」、生分解の「ロイカV550」を来年以降、日本やアジアでも生産開始し、グローバルに事業を高度化していく。

(中村恵生)

 ロイカEFは工場内で発生する残糸や未出荷品といった、従来は廃棄していた糸をリサイクルしたもの。リサイクル原料の比率が58%でスパンデックス初のGRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)認証も取得し、欧州中心にスポーツ・アウトドア、ファッションアパレルからの引き合いが多い。

 現在はドイツのみで生産するが、来年春には守山工場(滋賀県)とタイで、22年には台湾でも設備投資し、それぞれロイカEFの量産を開始。各工場の廃棄ゼロを達成し、サステイナビリティーへの関心が高まっている各地の取引先のニーズに応える。

 また、スパンデックスとして世界で唯一、生分解する「ロイカV550」もグローバル展開する。V550は土壌中で水とCO2(二酸化炭素)に分解し、独研究機関ホーヘンシュタインの試験で有害物質が発生しないことが確認された。分解制御技術によって、製品ライフサイクルで求められる期間の物性は維持。土壌での分解試験では、270日時点で一般のスパンデックスは2%しか分解しないのに対し、V550は35%分解した。

 こちらも先行した欧州で成功し、一定量まで拡大してきた。来年下期には守山での生産を開始する計画で、ロイカEFよりも大掛かりな投資を予定する。守山で得意とする機能糸の技術とも組み合わせ、V550のバリエーションを広げる構え。SPA(製造小売業)など日本の顧客をフォローし、アジア市場に向けても日本から供給していく。

 ロイカは規模での勝負ではなく、「取引先にとって重要とされる存在を目指したい」(芳賀伸一郎ロイカ事業部長)とし、サステイナビリティーや独自性を追求する構え。サステイナビリティーではバイオ由来原料やVOC(揮発性有機溶剤)フリーも開発テーマとし、ほかにも機能糸の開発を継続していく。

 また、顧客ニーズに対応したQR体制も追求。品番によって原糸ストックを検討するほか、タイ、台湾といった規模の大きい海外工場で納期に引き付けた量産のアクセルを踏み、一定量を即納できる態勢を目指す。すでに台湾で黒原着糸の生産を始め、想定以上の成果になっている。

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