丁寧な仕事から生まれる心地よさを伝えたい――カシミヤのニットウェア「FREEMAN-B」(フリーマン)は、台湾人の祖父を持つ柿岡恵さんが、叔父が運営する台湾の工場の物作りに共感して19年に始めた。普段使いのワードローブを揃え、一部の卸売りと自ら販売する期間限定店によって、着々と成長している。
台湾の工場は30年前から、内モンゴルのカシミヤ原毛の生産者から直接仕入れ、ニット製品を生産している。柿岡さんの叔父は、遊牧民の暮らしに敬意を払い、自分たちの活動が動物と環境を傷つけることにならないよう責任を持ち、生産から販売まで目の届く範囲で行ってきた。
自社製品は台湾の百貨店で直接販売し、輸出したことはない。紡績は台湾国内の職人に依頼し、ドイツ製の横編み機で生産する工程は30年変わらないという。排水で環境を汚染したくないので、基本は原毛の色を生かす。カシミヤにない黒を出すための染色は自社内で行っている。
トレンドの移り変わりの早さを日本のアパレル企業で経験した柿岡さんは、叔父の環境を大事にする真摯(しんし)な物作りに引かれた。自らも携わり、日本で販売したい気持ちが募り、叔父を説得。ストール、クルーネックのインナーウェア、レギンスの3型を何とか作ってもらいフリーマンを立ち上げた。販路もなく、自分でギャラリーを借りて販売したところ、心地よい風合いに共感する人は多く、無事に売ることができた。

その魅力は、カシミヤの滑らかで柔らかな毛の風合いをダイレクトに感じられ、しっかりと詰まった編み地だ。ドイツ製の編み機の特性とともに「熟練職人が昔ながらの手法で紡績している糸の良さもある」と柿岡さんは話す。手に取った瞬間の気持ちよさが言葉を介しなくても伝わり、程よくリラックスしたニットの表情に「見たことがない」と口にする人も。
年1回の発表を重ねてラインナップを増やし、ニットドレスやコートといったロング丈のカシミヤ製品も揃えた。編み立ての技術は高く、ダブルフェイス仕様やフレアラインといった複雑な形もきれいに仕上げている。ドレスで7万~8万円台。軽くて暖かく、普段使いに無理のない価格帯とあって、幅広い年齢層に受けている。


