20代の頃、私はファッションスタイリストとして、タレントやミュージシャンのスタイリングを手掛けていました。念願の職業ではありましたが、「依頼があって初めて成り立つ仕事」であり、長く続けていけるのかという不安を抱いていました。
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そんな折、知り合いのフォトグラファーとメイクアップアーティストと共に、一般のお客様を対象とした新しいビジネスを立ち上げました。それが、シニア世代専門の「えがお写真館」です。ヘアメイクとスタイリングを施し、撮影を行う写真館です。自分たちは何ができるのかはもちろんですが、どうすれば生き残れるのかが鍵でした。
写真館業は斜陽産業であり、それゆえ競合も少なく、差別化がしやすいと考えました。多くの写真館が子供を対象としている中、少子高齢化や遺影需要の高まりに可能性を感じ、あえて「シニア世代専門写真館」として挑戦を決意。34歳で起業し、東京・巣鴨に開業しました。
競合がいないことは利点ばかりではなく、需要喚起から認知に至るまで全てを自力で行う必要があり、試行錯誤の連続でした。1年ほど苦しい時期が続きましたが、テレビで紹介されたことをきっかけにヘアメイクが注目され、「シニアビューティー」という言葉が私たちを象徴する存在となりました。これを機に仕事が回り始め、私自身もシニア世代が〝素敵になれる場所〟をつくる使命を強く抱くようになりました。
(サンクリエーション代表 太田明良)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。