フランス 熱波が消費・供給に影響

2025/08/19 06:28 更新NEW!


セールの公式期間は終了したが、夏物が破格で売られている(パリ・マレで)

 【パリ=松井孝予通信員】フランス各地で猛暑が常態化しつつある。8月中旬、南仏各地では軒並み40度を超え、複数都市が観測史上最高を更新した。かつて例外的だった40度超えは00年以降284回に達した。ここ数年は6月や9月にも及び地域も拡大。猛暑が消費行動を変えている。

 6月の熱波では専門店来客数が前年同月比4.3%減少し、実店舗売上高は落ち込む一方、ECは4.2%増えた(仏小売統計)。英国の調査では、晩夏~初秋の気温が例年より1度高いだけで女性用衣料売り上げが週当たり約1270万ユーロ減るとの試算もあり、高価格帯の秋冬物は需要が先送りされやすい。都市中心部や観光地に集中するファッション小売店は、極端な天候による来店減や営業中断のリスクが高く、従来は保険で補ってきたが、近年は補償の限界も指摘される。EU(欧州連合)では気候リスクの財務開示義務化が進み、店舗ネットワークや立地戦略の見直しが求められる。

 供給面での課題もある。ILO(国際労働機関)の推計によると、39度を超える環境下で労働効率は大幅に低下し、世界全体で年間労働時間の約2%が失われる見通しだ。フランスでは今年7月、猛暑時の労務対応を義務づける政令が施行され、作業時間短縮や冷却対策が求められている。これらは建設・製造業全般に加え、ファッション産業にも波及する。縫製や仕上げ工程では作業ペースの低下や納期延長のリスクが高まり、染色や加工でも温度管理や工程安定化の負荷が増す可能性がある。国内の中間加工や物流が遅延すれば、供給網全体の効率にも影響を及ぼすだろう。



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