カーディガンが売れている。レディス市場でカーディガンといえば、働く女性などきれいめなスタイルの定番の羽織りアイテムだが、今好調なのはモード、カジュアルを基調とするショップたち。パステルカラーや短丈などデザインのバリエーションが広がっており、縁の下の力持ち的存在なカーディガンがおしゃれアイテムとして脚光を浴びている。カーディガンのみのカテゴリーで、売り上げが前年比約8倍と爆発的にヒットしている店もある。
新型コロナウイルスの流行で、家で過ごす時間が格段に増えた。これに伴い、アパレルでは家の中で楽に着用できる快適さが求められるようになった。クローゼットに眠っていたカーディガンを引っ張り出してきた人もいるのではないだろうか。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は、いまだ発令されたり解除になったり安定しない。しかし服に求める要素としては、自粛生活で慣れてしまった「ストレスフリーな着心地」が定着しつつある。カーディガンはさっと羽織れて、着脱も容易。あえて室内で脱ぐ必要を迫られることもない。この使い勝手の良さが時代感に合っている。
「売れている」との話が顕著になったのは、昨年の10月から。気温が高い日が続いたため、ウールコートやダウンジャケットを差し置いて、カーディガンがアウターとして支持された。アダム・エ・ロぺアトレ恵比寿店では、きれいめ、フェミニンスタイルを好む人が多く、毎年カーディガンの需要が高かった。この声を生かし、21年秋冬物ではカーディガンのバリエーションを拡充。潜在需要に品揃えがはまり、ほぼ右肩上がりで推移し今年1月、カテゴリー別売り上げで前年比約8倍というヒットをもたらした。
秋冬物では、フォックスなど毛足の長いふわふわ、もこもこ素材が人気だった。「Tシャツの上から着て、素肌に触れても気持ち良い」などの声があった。家の中で過ごす日が多く、暖かい日が続いたためだ。ローズバッド新宿店でも、毛足の長い素材が売れ筋だった。なかでも、ライトブルーのレパード柄といった個性的なデザインがこぞって売れた。
22年春夏に続くトレンドで、高揚感をくれる明るい色柄がヒットをけん引している。「はやっていると買っていく」「手持ちにない色と新鮮味を感じてくれる」という。
春物もパステルカラーやビビッドカラーから好発進している。特にレトロガールキヴィルミネ池袋店、アースミュージック&エコロジー新宿ミロード店といったヤングレディスのショップでは、グリーン、サックスブルー、イエローなど、いち早く春気分を味わえてさわやかな色の引きが良い。
若年層にとどまらず、伊勢丹新宿本店リ・スタイルでも春夏の立ち上がりから、「ダブレット」のキウイやトマトをモチーフにしたクロシェ編みのカーディガンが売れ筋として挙がってていた。トマトやキウイを模した丸いニットが連なった愛らしいデザインだ。今の気分に合ったのではと想像する。
ダブレットのように、従来の枠を越えた様々なバリエーションが広がっている。シルエットは、ざっくりと着られるオーバーサイズやジャケット感覚で羽織れるIライン。素材はニットに加え、サーマルなどカットソー見えするものも増えてきた。丈はミドリフ丈の影響をたっぷり受けて短くなり、「マーメイドスカートをバランス良く着こなせるトップ」といった新たな需要も見え始めている。ネックラインにひとくせ利かせたり、ビンテージ風のボタンにしたり、ディテールで遊んだデザインもある。
アウター代わりになり、トップとしても着用できる着回し力もやはり魅力だ。ビックカラーのブラウスとの組み合わせや、ジーンズでガーリー要素を抑えたミックススタイルが目立つ。ベーシックな脇役から、コーディネートの主役に変化している。
コロナ下で断捨離をする人が増え、クローゼットを再編集する動きも出てきた。そんななか、これまであまり見られなかったデザイン性の高いカーディガンが、買い替え、買い足しにつながっているのかもしれない。
今春夏は売れると期待し、各店が打ち出しを強めている。今後さらにバリエーションも増えてくるだろう。一方で、フェミニン系統のブランドでは「脱カーディガン」をうたう店もある。コンサバティブなイメージが強いからか、新たにシアーシャツやデニムシャツを羽織りものとして提案するという。これらのショップがカーディガンから脱し、シャツが浸透するのかも合わせて注目したい。
松本寧音=本社編集部レディス担当