《トレンド素材フォーカス》ニット
トレンドの70年代スタイルにマッチ
起伏のあるミドルゲージが新鮮
１５～１６年秋冬はニットアイテムが有力だ。欧米や東京のデザイナーコレクションでも多くのブランドが手掛けており、有力セレクトショップのほとんどが「最も売れる」と期待する。秋冬の店頭には、幅広いデザインのニット商品が並びそうだ。
ニットは、秋冬トレンドの７０年代調フォークロアスタイルに欠かせない存在であるのと同時に、継続トレンドのエフォートレスな気分に寄り添う素材でもある。さまざまな要因が重なり合う今シーズンは、ニットの当たり年になりそうだ。
バリエーションは幅広い。凹凸のある編み地のセーターやフレアラインを描くニットドレスだけでなく、パンツやスカート、セットアップもニット仕立てが揃う。フォークロア調が楽しめるアイテムは、ニットポンチョや長いフリンジを飾ったニットストール。７０年代特有の縦長レイヤードスタイルには、タートルネックセーターやロングカーディガン、ロングジレが必須だ。ニット帽やマフラーを組み合わせて、全身ニットのコーディネートを提案する店もある。
編み目はさらりとしたハイゲージよりも、もこもことしたミドルゲージが新鮮だ。ケーブル編みやパール編み、ミラノリブなど起伏のある表面感が楽しめるニットも多い。編み地をより複雑にしたり、異素材を組み合わせたりして、通常のニットとは一味違う表情を作っているものも。動きを加えるために、フリンジやタッセル、ポンポンを飾るデザインも注目だ。
ライトアウター人気で火
今シーズンの大きな特徴は、ベーシックな丸首セーターが影を潜め、コート、ジャケット、ボトムなど縫製や成形編みで立体的に組み立てるアイテムが増加していることだ。今秋冬物の生産がピークを迎えているニッターや商社で「例年に比べて多い」と一番に挙がるのが、ロングタイプの羽織り物。コーディガンをはじめ、軽く羽織れるライトアウターがトレンドに浮上したことが火をつけた。ライトアウターの台頭で「ニットで作りたい製品の方向が各社で明確になり、活発な受注につながっている」（日鉄住金物産）。ミセス、キャリアを中心に、独自性を求め、編み地や加工違いの素材をドッキングしたり、複雑な編み地を取り入れるなど、素材やデザインに工夫を凝らす傾向が強まっている。
次に挙がったのが、セットアップ。ミラノリブやリブニットのほか、ケーブル編みなどの凹凸感豊かな編み地や、柄が多彩に表現できるジャカードで「ブランドのアイデンティティーやシーズンテーマを主張する」（ウメダニット）動きも活発になっている。
ゲージは共通して、９、１０、１２ゲージが中心。糸は、紡毛への支持が高い。中でも目立つのが、モヘアやアルパカ混。糸特有の膨らみや長い毛足を生かし、ニットらしい温かみや柔らかさ、ボリュームを出す。軽さへのニーズから、ウール７０％にナイロンなどの合繊を複合するケースも多い。立体的なシルエットを表現するために、ストレッチ糸を混ぜて目を詰めたり、コンパクトなニットも増えている。特に丸編みは、一目では織物と区別できないほどコンパクトに仕上げたものに関心が高く、ライトアウター向けにも人気だ。ジャケットでは定着したが、コートに使用されるのは「ここ１、２年のこと」（三菱商事ファッション）で、今後ますます広がりそうな気配を見せている。
写真＝ヌメロ・ヴェントゥーノ
(繊研 2015/07/22 日付 19282 号 4 面)
