レディス卸の活路① ファッションの楽しさ届ける

2019/09/21 06:29 更新


 40歳以上の女性を主力とする専門店向けアパレルの低迷が続いている。繊研新聞社が概算した17年の衣料消費市場は9兆7500億円。08年のリーマンショックを経た消費不況の影響で市場規模は縮小したものの、11年から増加傾向に転じている。にもかかわらず中高齢向けのレディス卸は、売り上げの減少に歯止めがかからず現在に至っている。しかし、改善を妨げてきた課題を克服し、これから専門店と共生するための活路も見え始めた。

(赤間りか、北川民夫、津田茂樹)

 ミセス向けと言われるアパレルのターゲットは主に40歳以上だ。中堅企業は歴史も長く、主力ブランドは20年を超えるものも多い。30~40代をターゲットにしていたブランドの実売層が50~60代となったものも珍しくない。では、その実売層の人口はどうだろう。

市場は豊か

 国立社会保障・人口問題研究所の19年版人口統計資料では17年の年齢(5歳階級)別総人口で最も多いのは65~69歳で512万3000人、次いで45~49歳の468万人。多くのミセス向けブランドの実売年齢およびターゲットと重なっている。つまり、現在の土壌は豊かなのだ。ただし60歳以上は今後減少し、今の40代が60歳になるまでボリューム層にはならない。

 繊研新聞社が実施している全国アパレル業績アンケート調査で、毎年回答している卸型レディスアパレル7社の12年以降の売上高の合計推移をみると、18年度は12年度比で20.7%減となり、約75億円減少していることが分かる。

 この間に何があったか。12年まではファストファッションが成長し、低価格商品が席巻していた。収束し始めた14年に消費増税や、円安による調達コスト上昇が起こり、価格と品質のバランス重視の価格志向が強まったとされる。

 ECの台頭も顕著だった。国内のEC化率は12年から14年度まで0.3ポイントしか伸びていなかったが、15年度は2.1ポイント増の8.1%に高まり、EC市場は2120憶円増えた。以来、成長率は衰えていない。実店舗に向けた卸の減収傾向はECの伸びに反比例したと言える。

価値への目

 減収要因はECの成長だけではない。レディス卸関係者に尋ねると、最も多い理由は専門店経営者の高齢化に伴う販売力低下や廃業による取引先の減少だ。個人経営の専門店市場の縮小は誰もが認める。新たに店を開く若い世代がいる一方、中堅アパレルでは、そうした若いオーナーの専門店開拓が進まない。

 個人経営の婦人服店に向けた繊研新聞社のアンケート調査で、仕入れ先アパレルへの不満として最も多いのは「商品の同質化」だ。特に若いオーナーは売れ筋の服を嫌う。店の個性を出すために、他店やECサイトで手に入りやすいブランドを避け、知名度の低い小ロットのブランドでの構成を好む傾向だ。

 そうしたブランドは総じて原価率が高く、1着当たりの利益は少ない。だが、そうした服こそが売れるのだ。バイヤーだけでなく消費者も手間がかかった価値への目が肥えている。

 反対に、高齢者オーナーの店は商品より有利な取引条件を望みがちで商品の個性を二の次とすることも多い。次第に感度や商品の目利き力が鈍化し、顧客にファッションの楽しみを届けられなくなる。アパレル側もこの風潮に慣れ、使命とも言える商品本位が薄れてはいないか。

 個人経営の専門店の事業環境は厳しい。それでも、残ることができる優良店に受け入れられる商品を提供する。ここに、レディス卸の活路がある。

(繊研新聞本紙19年7月29日付)



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