【パリ=松井孝予通信員】フランスから米国向け小包便に急ブレーキがかかった。フランス郵政局(ラ・ポスト)は8月25日から米国への小包受け付けを停止している。100ドル以下の個人間ギフトのみが対象外となる。トランプ大統領が7月末に署名した大統領令により、8月29日以降、これまで800ドル以下に適用されていた少額免税制度(デミニミス)を撤廃し、欧州各国からの小口輸入にも一律15%の関税を課す方針だ。
仏郵政局によると年間約160万件を米国に発送し、個人利用はその2割だった。また仏経済紙は、企業や小規模事業者が影響を受けると伝えている。国際郵便に依存する独立系デザイナーやDtoC(消費者直販)ブランドにとっては、米国顧客への直販ルートが実質的に閉ざされることになる。大手企業が現地法人や既存流通網で対応可能なのとは対照的だ。
当初、この措置は越境EC大手「シーイン」「テム」を狙ったものだった。しかし実際には国際的に広がり、ベルギー・Bポスト、ドイツ・ドイチェポスト、スペイン・コレオスに加え北欧や中東欧、さらに韓国、シンガポール、インドなども相次いで発送を停止している。
欧州郵便事業者協会は、米国税関当局が運用詳細を8月15日まで明らかにせず、データ提出や関税徴収方法が不透明だと批判した。速達便や民間宅配は当面継続される。