エジプトと聞いて多くの人がイメージするのは、やはりピラミッドや古代の神殿などだろう。同国を訪れる外国人観光客は政変やコロナ禍で一時落ち込んだものの、24年は1570万人と過去最高を記録した。今も新たな遺跡が砂の下から次々と発掘され、教科書を変える新発見も期待されている。
政府も観光業に力を入れ、28年までに3000万人の観光客獲得を目標に掲げた。世界最大級の大エジプト博物館も昨年テストオープンしたばかり。総工費の半分以上を日本が円借款として支援した。19世紀から続く日・エジプト関係だが、今後は日本人観光客の増加も期待される。
一方、ここにきてエジプトは観光だけでなく、縫製拠点としても脚光を浴び始めた。欧米向けが多かったトルコの政治や経済の混乱などを受けて、生産を分散化する動きが加速。エジプトの〝トランプ関税〟が10%にとどまったことから、対米生産地としても注目されている。
ただ、すぐに海外バイヤーの思い通りにビジネスが進むとも思えない。世界の政治や経済の構図が瞬時に変わっていくような時代だが、王朝成立以降だけで5000年を超える歴史を持つ悠久の国の人々だ。誇り高き彼らとの関係を構築するには、そう簡単ではないはず。長い目線でじっくりと付き合わなければならないのは、外交も経済も変わりない。