長年、靴を販売してきて、不思議に思う。お客様は革靴を購入されるとき「これは修理(ソール交換など)ができますか?」と質問されます。もちろん我々は、決めぜりふとして「もちろん、どのような修理でも承ります」とお答えしています。ところが何年か経って、そろそろソールの減り具合も気になる頃だと心配しても、ソール交換の修理にご来店くださるお客様は、なんと10人に1人ぐらいです。
本来、革靴は修理して長い間愛用いただけるよう、頑丈に作られています。つまり、サステイナビリティーと言われる前から「持続可能」なアイテムなのです。しかし、ほとんどのお客様が修理をせずに、新しいものに買い替えていると考えられます。それに「修理に出すぐらいなら売ってしまおう」という選択肢もあります。愛用品という言葉は、もう古いのかもしれませんが、買うときは「修理して長く履ける」という靴選びの利点を、実際はほとんどの方が生かしてくれていないのです。
一方で、最近は靴磨きや革靴のメンテナンスのイベントが人気です。以前のように、たくさんのお客様が来店することはなくなった今、我々は一人ひとりのお客様と密に接しています。修理をもっと身近にお勧めできなくてはなりません。そして靴の総合的なコンシェルジュのようになってこそ、この仕事の未来が開けると思っています。
(GMT社長)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。