阪神梅田本店は、売り場に「ナビゲーター」と呼ぶ社員を配置している。SNSなどを活用して、お客様に日常の暮らしを彩るアイデアやヒントを提案し、ファンコミュニティーの形成を目標にしている。
例えば、キッチン用品担当のSはインスタグラムで自作の弁当などを披露している。あるときSから、いつも弁当を残しがちな娘のためにと、Sの投稿を参考に盛り付けを工夫されたお客様がいると聞いた。今や、残さないどころか、なんと雑誌社の弁当コンテストで優勝するほどの腕前だそうだ。売り場のイベントに参画してくださったこともある。Sは、お客様の問題を解決したうえに、お客様の自己実現へのお役立ちができた。
当社を含むエイチ・ツー・オーリテイリンググループは今、「コミュニケーションリテイラー」というビジネスモデルを目指している。リアル店舗とオンラインの双方で、お客様と継続的で深いコミュニケーションを通じて、一人ひとりのお客様にふさわしい価値・商品・サービスを提供していく。
百貨店は、新しいモノが見つかるという機能的価値に、新しい暮らしが見つかるという文化的価値を加えて、さらに新しい自分になれるという自己実現価値を支援する時代が来た。社員には、お客様の自己実現のお役に立てる高い専門性と共感力を身につけてほしいと考えている。そして、「お客様の暮らしを楽しく 心を豊かに 未来を元気にする楽しさナンバーワン百貨店」として、お客様にとってなくてはならない存在であり続けたい。
(阪急阪神百貨店社長)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。