注目されるミレニアルズ
今大会の最終セッションは、ミレニアルズ世代の起業家7人を招き、起業に至った経緯やビジネスについて各自語ってもらう形式だった。ミレニアルズが特に注目された今大会を象徴する締めくくりといえるだろう。
大きい影響力
ミレニアルズは、1980年から2000年代半ばまでに生まれた世代を指す。つまり、今は学生から30代半ばだ。米国国勢調査局によると、米国では昨年、ミレニアルズが7530万人となり、これまで最も多かったベビーブーマーを上回った。
このミレニアルズが有望な顧客層として最も注目されている主な要因は、人数的な規模もさることながら、その影響力の大きさにある。口コミやソーシャルネットワークで広がるパワーが極めて大きいのだ。そのミレニアルズをひきつける上でも、今までの考え方は通用しない。日本的にいえば従来型の「おもてなし」がミレニアルズには理解されないことがありそうだ。
会員数2500万人を抱えるチョイスホテルズのステファン・P・ジョイス社長兼CEO(最高経営責任者)によると、ベビーブーマーはホテルにチェックインするとき、フロントで顔をつきあわせたフレンドリーな接客を求め、部屋に入ったらなかなか出てこない。ミレニアルズはその逆で、フロントを素通りしてチェックインできることを好む。そして部屋に荷物を置くと、すぐにロビーに降りてくる。周りに人がいる状況は好きなようだが、iPhoneやiPadばかり見ていて会話はしないという。
そのため、「ロビーで盛り上がっている雰囲気を出したり、コーヒーのサービスをするなどしている。24時間何か食べるものを提供することも重要だ」とジョイス社長。ウーバーやスターバックスなどと組んで、ポイントがリアルタイムで記録されて通貨として使えるようにもしているという。
「ソーシャルメディアが与えるインパクトを測るのはとても難しい」と話すジョイス社長だが、いろいろ試しているようだ。14年には、「最悪のバケーション経験コンテスト」を開催した。ひどい思い出を投稿してもらい「うちのホテルでいい思い出に変えて」という狙いで、賞金1万㌦を提供したという。
買いやすさで
ブラジルのリテール・ソリューション・プロバイダーのゴーヴェア・デ・ソウザの創業者のマルコス・ゴーヴェア・デ・ソウザ氏は、「ミレニアルズは、モノよりもサービスに興味を持っている。サービスがこの世代にとって新しいステータスシンボルになる」と話した。
モノよりもイベントや生のパフォーマンスなどに、よりお金を使うミレニアルズ。とはいえ一部の成功した起業家や裕福な親をもつ人を除くと、ミレニアルズの可処分所得は限られている。そのためモノでも経験でも買いやすいことが求められる。
ゴーヴェア・デ・ソウザ氏は自然食品や有機栽培食品を多く扱うことで知られる大手食料品チェーンのホールフーズマーケットを例に挙げ、「ホールフーズは、コンセプトはミレニアルズに合っているが、価格がミレニアルズに合っていない。そのため、ミレニアルズを満足させるべく365(ホールフーズマーケットの廉価版の365・バイ・ホールフーズマーケット)を始めた」と話した。
ホールフーズマーケットは365の1号店を昨年ロサンゼルスにオープンし、今年は3店、来年は多くて10店をオープンすると発表している。同氏は、「ミレニアルズは小売り環境全体を変える」と、その影響力の大きさを強調した。(ニューヨーク=杉本佳子通信員、写真提供=全米小売業協会)