パリ五輪の開幕を7月26日に控え、大会セレモニーが行われるセーヌ川両岸に敷かれた厳重な警戒体制が、商業・サービス業に深刻な影響を与えている。
開会式の観客33万人を迎えるセーヌ川周辺は、テロ警戒地域(グレーゾーン)に指定され、県警からQRコードを取得した住人・通勤者、宿泊者以外の立ち入りが禁止されている。これにより指定地域のブティックや飲食業はほぼ休業に追い込まれた。
さらに同周辺の商業地は車両通行禁止となり、公共交通機関も封鎖されているため活気を失っている。配達も深夜から朝5時までに制限され、配送料金の一時的な急騰や深夜勤務手当の増加など、企業にとってはコスト増が重なっている。会期中は公共交通費も約2倍だ。
開幕が秒読みになるにつれ、警戒地域の拡大や直前の変更が次々と行われ、ますます身動きのできない状況になっている。これを受け、商業・サービス業の連盟は経済的な苦境を訴える共同声明を発表した。これによると客数は前年比30%減、地域によっては70%の減少がみられている。パリが所在するイルドフランス県は、五輪により損失を受けた会社への損害賠償を検討していると仏メディアが報じた。
パリ五輪は開催地の経済に一定の影響を及ぼしており、企業は対応に苦慮している。
(パリ=松井孝予通信員)