16年春夏向けの東京レザーフェアでは、複数の加工を組み合わせた意外性のある表情や風合いが提案された。輸入する原皮価格の高止まり、円安為替などで安定した価格での供給が難しい中、手間をかけた加工に価値が見いだされている。高額市場に向けては、一段と質の高いヌメ革に力を入れる傾向も見られた。
「陽気で大胆な柄を楽しんで欲しい」というのは、富田興業。自然をテーマにした柄を揃える一方で、様々な配色のグラフィカルプリントを充実。日本の伝統技術である白なめしのピッグスキンで独自性を出す。スエード面の繊細な起毛に多様なプリント柄を密着させ、ドッド柄から細かい幾何柄をのぞかせるなど、平面に奥行きを出した。1デジ90円前後。
スエードを専門にする中村貿易は、白なめしのピッグスエードにインクジェットでプリント加工した。ドローイングを組み合わせたブロックチェックなど、手描きの作品も鮮明に表現。アウターウエア用途にも活用が広がる。60円前後。
色を重ね、一様ではない新しい見え方にしたのはニッピフジタ。柔らかいゴートを黒や青、赤などに染め上げ、その上から白いワックスを手塗りし、流動感のある柄を浮き立たせる。76円。
ジャカードやデニム風など織り柄を表現したものも新しい。布のように見えて、革本来のしなやかさな手触りに意外性がある。シンヤ工業所は、国内産の原皮に千鳥格子を型押しし、メタリックブルーを染色した上から黒の染料を拭き上げ、濃淡に奥行きを出す。その上から迷彩柄を型押し、揺らぎのある印象に仕上げている。
佐藤商店は、イタリア製でメタリックな意匠レザーを充実させた。ワッフルの型押しタイプは、スタッズ装飾を思わせるハード感があるのに、触るとソフト。見た目ほど重量感もないので、様々な用途に使えそう。130~140円。
ゴートのメッシュ素材で多彩なバリエーションを揃えたのは。レーザーカットの一枚革とは異なり、編み組織ならではの立体感が新鮮だ。グラデーションの箔(はく)加工には美しい陰影感が出ている。
価格にとらわれずに上質な物作りをするブランドなどに向けて、革本来の風合いを追求した高級レザーも目立った。去勢をしていない雄牛のステアを提案するのはフジトウ。厚みが4.5㍉、ゴワゴワとした天然のシボに特徴がある。希少性が高く、「本物志向の作り手に使ってもらいたい」という。141円。
革の味わいが際立つよう、オイルを充分に塗り込んだ天然レザーも注目だ。碓井は、原皮からメード・イン・ジャパンにこだわり、姫路産地でなめし加工を依頼したアメリカンオイル仕上げのステアを揃えた。厚さ3.5㍉の丈夫な風合いで、刻印をきれいに表現できる。90円。
吉比産業は、イタリア製でワックス仕上げの馬革を推す。程良い強さとしなやかさを備え、折り曲げると、美しい陰影が浮き立つ。150円前後。