TPP(環太平洋経済連携協定)の大筋合意により、その対応のために知的財産制度の整備が進められている。ファッション業界にとって最も影響が大きいのは、商標の不正使用などにより生じた損害を賠償するための法定損害賠償制度、または追加的損害賠償制度の導入だろう。これにより、賠償額が従来よりも増える可能性がある。
現状では、偽物の販売など商標権侵害があって損害賠償を求める場合、どれだけの損害が出たかという損害額の立証は商標権者がしないといけない。しかし、現実にいくらの損害が出たか、もし偽物が出回らなければ本来これだけ売れたはず、あるいは偽物が出回ったことによるブランド価値の失墜などは金額で計りにくい。そのため米国などでは法定損害賠償制度が導入されている。これにより権利者側の負担が軽くなる。
米国では1商品・サービスにつき、最低いくらから最高いくらというように賠償額が設定されている。過失ではなく故意の場合はさらに金額が跳ね上がる。TPPでは各国がそれぞれの実情に合わせて額を決めることになる。
もう一つ気になるのが、追加的損害賠償制度。これは米国などで導入されている懲罰的賠償制度と類似の制度だとみられるが、米国では実際の損害額の3倍まで賠償請求が認められている。日本政府はこのいずれかの制度の導入を検討しており、損害賠償額が従来よりも増える可能性がある。こうした制度は著作権侵害でも導入が予定されている。