「DX(デジタルトランスフォーメーション)改革」と世間は騒々しいですが、「せいては事を仕損じる」です。最初に結果だけを求めるのではなく、チームメンバー間の関係性の質を向上させることこそが、DX成功の迂遠(うえん)な最短距離なのではないでしょうか。人は変化に抵抗するのではなく、変えられることに抵抗するのです。その理解なくして、無理やり水辺に連れて行っても、結局は水を飲ませられません。
企業家はどこにもいる
アパレルで仕事をしていた私をハンティングした社長が、居並ぶ幹部諸氏を前に、「横山君は、皆を水辺に連れていくだけでなく、水を飲ませることができる人物だ」と紹介してくれました。一生に一度あるかないかの賛辞に動揺しながらも、私の自己肯定感は一挙に高まりました。
こうした理解ある経営トップがいたおかげで、私はその企業で次々にデジタル化を実現することができ、外資系日本支社でありながらジャパン社発のビジネスモデルを本土に輸出していました。
仏経済学者のJ・B・セイ氏が、企業家は経済的な資源を生産性が低いところから高いところへ、収益が小さなところから大きなところへ移すと定義しています。この定義に従えば、一般に我々が知る偉大な企業家だけではなく、効率的な仕事をコツコツ進める人間でさえも企業家の仲間入りが果たせることになります。私も実はこうした普通の社員の一人に過ぎませんでした。
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