GMS、消費者取り込みから再建へ

2015/04/13 12:42 更新


《知・トレンド ニュースサクサク》落ち込み続くGMSの衣料品 大手各社の収益を削る

 GMS(総合小売業)で衣料品の落ち込みが大きくなっている。消費増税以降の冷え込みが強く表れたかたちだ。各社の収益を削り、15年2月期でイオンリテール、イトーヨーカ堂は大幅減益に見舞われた。客層を広げる施策などで再建を目指す。

大手量販店の15年2月期


 GMSの衣料品売り場は逆風に弱い状態が続いている。日本チェーンストア協会の販売統計では、食料品が単価上昇も取り込みつつ前年水準を維持して健闘する一方、衣料品は月次で5%を超える落ち込みとなることが多い。大手GMSの15年2月期業績でも衣料品は減収幅がほかよりも大きい。

 「天候不順」が災いすることも多い。実際、気温の変化など平年とのずれはある。ただ、他の業態と比べれば、逆境を乗り越える力が弱まっている感がある。

 「GMSの衣料品売り場で買い物をしたことがないまま、大人になる女性がほとんどではないか」。担当者から聞こえてくる嘆きは深刻だ。

 例えば、スクール水着など学校向けはGMSの独壇場といわれる。しっかりした売り場を作り続け、地域の信頼を得てきた結果だ。しかし、学校向けを購入する母親たちは、自分の服を買う場所として認識していない。買い物経験がないからだ。

 駅ビルやSCのテナント、ロードサイドの総合衣料品店まで、浮き沈みはありつつもヤングを引き付けるが、GMSはそれをずっと確立できずにきた。次の世代がGMSを自分のための売り場と思わず、入ってこないため、客数は伸びないし、客層の高齢化が進む。支持する層が減っているのは、逆風への弱さにもつながっているだろう。

 GMSは大型SCの核店舗になっていることが多い。専門店ゾーンまで来ている多くの消費者を引き込むための施策に、各社とも力が入る。見え方の親和性を高めるほか、専門店型売り場の構築などを進めるが、その成否は今後に関わってくる。

 思うように売れない中で、円安の進行や「ユニクロとの量の差」は、競争力のある商品作りや収益確保をさらに難しくしている。そこで絞り込んだり、回転を遅くすることで対応しようとして行き過ぎれば、バラエティーに欠けたり、変化のない売り場になってしまう。食料品売り場があり、来店頻度が高いことを前提とした売り場にもかかわらず、そうした状況に陥るのであれば、衣料品は「難しいのではないか」(専門店社長)という辛らつな言葉もある。

 ここにきて、地域対応の強化で個々の売り場の魅力を引き上げようという取り組みが始まっている。これは、15年度の重点だ。各社とも経営体制の変更を伴ってスタートする年度であり、組織を変えて進める。新店が少ないこともあり、既存店改装で活性化を追求する。

 大手量販店の組織変更は、地域ごとに異なるニーズを捉えることを目指したもの。効果は食料品が先行しそうだが、衣料品、住居関連品も併せた組織変更となっている。

 イオンリテールは、東北、北関東・新潟、南関東、東海・長野、近畿・北陸、中四国に置かれた地域カンパニーの自立がテーマ。カンパニーの支社長を刷新、権限委譲を進める。商品部門でも、衣料、食品、住居余暇、H&BCの各商品企画本部内にあった各地域の商品部を、カンパニーに移管した。販売計画もカンパニーから積み上げることに力点を置く。

 イトーヨーカ堂は、地域に根ざした個店主義がテーマ。収益の責任は店にあるとして、本部はそれをサポートする役割になることを目指す。チェーンストアのあり方から見直す構え。商品本部のDB(ディストリビューター)事業部に属していた衣料と住居の地域DBと、食品事業部の地域DBを、販売本部に移管し、北海道、東北・北関東、中京、信越の各ゾーンに商品担当として配置した。商品担当として販売現場に近づき、個店ごとのニーズをくみ上げ、品揃えに反映させる。



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事