阪急メンズ東京は29日、11年の開業以来最大規模の改装を実施する。ファッション感度が高い客やインバウンド(訪日外国人)需要をつかんでいるデザイナーブランドを集積する2~4階に加え、これまで手を付けてこなかったヤングや百貨店向けNBで構成する5~7階の改装にも着手する。
同館の15年3月期(14年4月~15年3月)の売り上げは前期比7・5%増の135億8800万円、今期に入っても4~7月に2ケタの伸びを見せている。それでも大掛かりな改装に踏み切るのは、インバウンドによる免税売上高が売り上げ構成比の10%を超える一方で、消費増税後の国内客に関しては「成長率が鈍っている」(溝口博之店長)との危機感があるためだ。
雑貨と買い回り促進
オープン以来手を加えていなかった5~7階は、中間層や若年層マーケットが停滞し、伸び悩んでいる。ここに高感度で大人向けのブランドを導入することでグレードを高め、テイストを統一する。「よりファッションへ関心が高い層を取り込み、地下1階、1階のビジネス雑貨との買い回りを促す」のが狙いだ。
ビジネスウエアを集積する5階には「ポール・スチュアート」「フランコ・プリンツィバァリー」を導入する。「バーバリー」の跡地には「ブルックスブラザーズ」を入れ、「バーバリー・ブラックレーベル」は「ブラックレーベル・クレストブリッジ」に引き継ぐ。
カジュアルウエア主力の6階はデニムとコンテンポラリースタイルを強化する。既存の「ガス」「デンハム」などを拡大し、4階から「アルマーニ・ジーンズ」を移設する。このほか「トッドスナイダー」を入れる。
ヤング向けブランドと雑貨が中心の7階は「プーマブラック」「ハイストリート」などを新しく出すほか、「ケント・アンド・カーウェン」を5階から移設する。
訪日客需要もつかみ
2~4階のデザイナーブランドを集積するフロアは、インバウンド需要も取り込めるブランドを新規導入し、成長をさらに加速させる。
2階は「バーバリー・プローサム」「バーバリー・ロンドン」、3階は「ヘルノ」の期間限定店、4階は「アミ・アレキサンドル・マテューシ」「ジュンヤワタナベ・コムデギャルソン・マン」「オムプリッセ・イッセイミヤケ」「ガンリュウ」などを入れる。
競合激化をにらむ
8階はすでに改装を実施した。全館の品揃えからブランドの枠を超えてコーディネートを提案する「スタイルメイキングクラブ」を4階から移設拡大した。このほか受注会やファッションセミナーを開くイベントルーム、カード会員向けのレセプションスペースを設けた。顧客のストアロイヤルティーを高めるフロアと位置付けた。
背景には阪急メンズ東京が立地する銀座地区が今後、ラグジュアリーブランドの旗艦店やセレクトショップ、百貨店などの競争が激化することがある。三越銀座店、松屋銀座本店は秋に大規模なリモデルを行い、冬には三越伊勢丹が銀座にほど近い丸の内に約1000平方㍍のメンズファッションのセレクトストアを出す。さらに16年春には東急不動産が大型商業施設「銀座5丁目プロジェクト」(仮称)、同年秋にはJ・フロントリテイリングや森ビルが銀座6丁目の松坂屋銀座本店跡地に大型複合施設を出すなど新規出店が相次ぐ。