傘作家の飯田純久さんが手掛ける「イイダ傘店」は9月15日まで、20周年の展覧会「わたり」を東京・南青山のスパイラルの1階で開催している。20年にわたって制作した多彩なオリジナルテキスタイルの魅力と、人の手を介した傘作りに込めた思いを伝えるものだ。
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会場奥のアトリウムには、300本近くの傘を使い、水辺で休み、その上空を羽ばたく渡り鳥を表現した。「自分たちが作った傘を皆さんに届けて、使ってもらって、修理も受けて帰ってくる場所がある。それを持ち主に返していくやり取りを渡り鳥に見立てた。分業制で生産している傘が、職人の手を渡って出来上がっていくことも掛け合わせた」と飯田さんは話す。

通路では、これまでに日本の産地で制作した160柄500種に及ぶ生地を生かしたインスタレーションを見せる。三角に切り取ったテキスタイルをつるし、手に取って見られるエリア、制作の過程や過去に作ったスペシャルなパーツを見せる〝仕掛け窓〟など、ユニークな見せ方で工夫を凝らした。


今回の展覧会を機に、傘の布地の総張替え修理も始める。使い手とのコミュニケーションをさらに深めていく考えだ。奥のスペースには長く愛用して外した傘の布を展示、経年の美しさも感じられる。
