デサントは、8月に子会社化した英イノヴェイト社が持つシューズの開発ノウハウを活用し、ランニングなどパフォーマンスのシューズ事業をテコ入れする。「イノヴェイト」ブランドのアジアでの価値向上にも努め、ブランド売り上げを近年中に倍増させる。
デサントの15年3月期の販売足数は320万。前期実績を28%上回ったが、ライフスタイル(日常使い)品として消費されたものが多く、「本格的なパフォーマンスシューズは満足できるものではない」(田中嘉一専務取締役)。特にランニングシューズが課題で、この面でイノヴェイトの技術を生かし、ユーザーの満足度を高めたい考えだ。
イノヴェイトはウエイン・イーディー氏がオフロードシューズ市場向けに立ち上げたブランド。現在、欧米を中心に約60カ国で販売され、14年1~12月の売上高は約36億円。湿った山道、硬い路面、ロード用など全地形にあったソール形状の開発に長けており、国際見本市などでも数多くの賞を得ている。デサントは13年から日本、韓国、香港で独占輸入販売していた。
子会社化により、デサントは特にイノヴェイトのソール開発技術を活用できるとみている。既に両社による合同チームを設置し、シナジー発揮に向けた検討を開始。田中専務は「例えば『ルコックスポルティフ』なら女性専用、『アンブロ』ならサッカートレーニング用など、各ブランドでギアとして支持されるパフォーマンスシューズを作りたい」と強調する。
一方のイノヴェイトとしても、今回の子会社化はブランドのさらなる事業拡大のチャンスとなる。現在イノヴェイトの販売は欧米が中心で、「アジアでのプレゼンスは弱い」(田中専務)が、同地域での小売り事業に明るいデサントが主体的に拡販に関わることで、「成長を続けていき、4~6年以内には現状の売り上げを倍増させる」(ゴードン・ベアードCEO=最高経営責任者)という。