ドイツで花咲く、地産地消のデザインメッセ(吉田恵子)

2014/12/22 00:00 更新


独立系デザイナーが地元で生産した製品を地元消費者に直接販売するローカルなB2Cデザインメッセが、ドイツやその周辺国で近年盛んだ。

去る12月5〜7日の週末 フランクフルトで、デザインメッセ「シュティルブリューテン」が開かれた。

会場は メルセデスベンツの販売センター。メルセデスベンツといえば世界各地のファッションウィークのスポンサーで知られるが、当地においては販売ホールを提供し協賛する。さらにPR等においては市や美術館も後援する。

 

会場内・外観、メッセ創立者フリードリヒスさん(右下)

 

同メッセは2005年、広告関連の仕事するステラ・フリードリヒスさんが、友人の地元デザイナーのために小さな販売展示会を開いたことに始まる。これが評判になり、年々規模が大きくなり、現在は90の出展者を数えるまでとなった。

「従来型の店にはない、個人志向のファッション、デザインを制作者自らが紹介、販売する」と銘打ち、 服、アクセサリー、雑貨・インテリア等が展示販売された。

またメッセ会期前の2週間は、ファッションに関するワークショップ、デザイナーの工房見学といった複数の催しが行われた。売り買いだけでなく、市民がファッションに触れ楽しめるフェスティバルに発展してきている。

 


Ni-Ly 台湾にルーツを持つ林郁東さんがデザイン・製作するレディスブランド(墺グラーツ)。幾何学的フォルムからなるパターンと天然素材がつくり出すドレープ、ラインが優美だ。独自性と高い加工技術に対して与えられる今展シュティルブリューテン・デザイン賞を受賞した


メッセ当日、会場は始終大賑わい。

ブース間で共用の鏡を見たくても、なかなか順番が回ってこないほどだった。 出展者の殆どはデザイナー本人と、手助けする友達等で販売。 一度に複数の客が押し寄せ、てんてこ舞する姿がそこかしこでみられた。

 


 km/a デザイナー、カタ・ハラーさんとミヒャエル・エリンガーさん(写真)によるブランド(ウィーン)。軍の毛布、テント、綿製パラシュート等をアップサイクリングしたアイテム(男女各用)が特に注目されている。前デザイン賞受賞者。日墺交流年にはファッション交流の枠内で日本でも紹介された


出展者の 大半は、フランクフルト近辺または国内に拠点を置く独立系のブランドだ。オーストリアなど周辺国からの出展もある。うち殆どは、工房でデザイナー自らが中心となりコレクションを意匠・製作。縫製を外注する場合も殆どは国内業者に委託する。

主な販路は、ドイツや周辺国各地のデザインメッセ、工房またはオンラインでの直売だ。またどの製品にも何らかの環境・倫理的な配慮がなされている。

 

 
ROMY Kraft. Fashion & accessoires ロミー・クラフトさんがデザイン・製作するブランド(独ハレ)。短靴を優雅なブーツに変身させる ゲートルコレクション(男女各用) が特に人気。主な素材は高級感に満ちたジャガード織。撥水・防寒といった機能性を備えたアイテムもある。写真:René Schäffer


同メッセ創立者のフリードリヒスさんは、「マス向けのファッションに飽き飽きし、また大型ブランドの製造過程における人道性や持続可能性を疑問視する人が増えている」とし、ローカルなデザインメッセのさらなる成長を予測する。

また、デザイナーの視点からは「通常の産業見本市に出るとなると注文に対応するため大量生産体制を整えないと難しいが、そこまでの規模を持たないデザイナーも多い」(フ氏)。

メルセデスベンツや市の協力があることで 、ブース賃料が手頃な額に抑えられていることも、小規模ブランドの販売活動を後押しし、個性派商品に(安くはないものの)良心的な価格をつけることを可能しているとみられる。



Gracy Q 仕立屋アンネ・ケンプフェさんによるレディスブランド(独ライプチッヒ) 。1930〜50年代のレトロスタイルが現代風にデザインされている。オフィスウェアとして着られることが多い

 

経済がグローバル化する一方で、食品同様に、生産者と消費者が直接商品情報、そして言葉を交わしつつ売り買いできる場へのニーズは、今後さらに高まるだろう。


Kerbholz ドイツ初の木製デザイン・サングラスと腕時計のブランド(ケルン)。ドイツと周辺諸国ほか日本でも販売する。収益の一部を非営利環境団体に託し、商品一つ売る毎に木を一本植える、というプロジェクトにも参加



フランクフルト在住。身長152cm。大きなドイツ人の中にいると小人のように見えるらしい。小回りだけは利くジャーナリスト兼通訳。ファッションからヘルスケアまでをカバーする。



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