「大量生産が安売り競争を招いている。ファッション業界はこの仕組みを変えなければならない」とルミネの新井良亮社長。長年続く値引きの常態化は「価値を求める今のお客様のニーズにそぐわない。店やブランドの価値を損なうだけ」と業界に改めて警鐘を鳴らす。
15年3月期のEC(電子商取引)事業を除く全15館の売上高は3213億円(前期比0.8%増)で、増収を確保。ただし、期初計画にはとどかなかった。「消費増税前の駆け込み需要の反動による今年3月の減収は予測していた。それよりも、周囲のセールで荒れたのが大きな要因」と見る。
「適正な時期に適正な価格で価値のある商品をしっかり売る」方針の下、前期も夏と冬の全館セール開始時期を他の商業施設に比べて遅くしたが、「他施設のセールの早期化・長期化の影響」を受け、セール実施月である7月と1月に前年割れとなったことが響いた。
今期から17年度を最終年度とする新しい中期経営計画を開始、「CS(顧客満足)からCD(カスタマーディライト=顧客感動)の創造への進化」を中核テーマに掲げる。そのためには「モノではなく、価値と文化を売る発想への転換」が不可欠。
今月初旬に全取引先ショップの経営トップを集めて開いた方針説明会「ニュールミネ会総会」では、「従来通りのモノ作りでは駄目。専門店としての立ち位置を今一度考え、安易な安売りはやめてほしい。もしできないのであれば、今後の取引について考える」と発言、各社に姿勢の転換を強く求めた。
「安売りを招く大量生産は合理化・効率化経営を過度に進めた結果。この点を理解し、実行している取引先は残念ながら少ない。これではファッション業界が駄目になる」と危機感を示す。