大手素材メーカーが今春夏、オンライン展示会を相次いで開いた。コロナ禍で対面のイベントが延期・中止となるなか、急ごしらえではあったが、次世代のテキスタイル展示・商談の在り方を見いだしつつある。結果として、効率化などの利点はもちろん、オンラインならではの効果も分かってきた。リアルな手段との上手な併用で、より幅広い層にアプローチできる。
(小島稜子)
■常設ページと差別化
3次元のものを2次元で表現するオンライン展示会では、リアルより視覚的に簡略化され、触覚など伝えることが難しい情報がある。それをどう補うかが、顧客の満足度を上げる大事な要素となる。
インターネットでは、個人出店もできるECモールのように個人と企業、資本規模など様々な差がフラットに見える。オンライン展示会では、常設サイトとの差別化が焦点の一つ。ユーザビリティー(ストレスの少ない操作性)を維持しながら、イベントの特別感を閲覧者に与える工夫が必要だ。
帝人フロンティアは7~9月の「バーチャル総合展」でイベントらしさを出すため、ブースごとの閲覧数を可視化した。毎日変化するので、「何度もアクセスする楽しみにもなったのでは」と見る。各ブースと会場全体のイメージ図は3D・CGで表示、バーチャル感を高めた。一方、各製品紹介のサムネイルはクリックの手間を極力減らし、スクロール操作でストレスなく見られるよう一つの画面に並べるコンテンツ数を計算した。
旭化成アドバンスも7月の環境配慮型素材「エコセンサー」展で、会場全体を立体的な部屋のイラストで表現し、生地サンプルのページは分類ごとにフラットにサムネイルを並べた。
シキボウは6~9月、「バーチャル展示会」として実写の360度画像を使い、リアル会場にいるような視点で見せた。地図アプリ風に表示される矢印をクリックし移動する。各素材の資料や説明動画などのコンテンツは、サンプルや掲示物をクリックして表示した。1カ月弱という短納期で、開発済みの展示品などを活用するための選択だったが、他社にない形式で閲覧者から「バーチャル感がある」と好評だった。
■風合いの見せ方工夫
生地の手触りや質感など細かな風合いは現物でないと伝わりづらく、大きな課題となった。旭化成アドバンスは、15センチ四方のミニハンガーを会期前に顧客へ送付した。現物を手元で見てもらいながら展示をオンラインで案内し、好評だった。
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