繊研新聞は月2回掲載の「専門店」面で、全国各地域の個店・専門店にフォーカスし、現状や取り組み、展望をリポートしています。今回、街の有力店オーナーに集まっていただき、大いに語ってもらいました。その一部をご紹介します。(2015/8/20付8面より)
《街の有力店座談会》
客の心をとらえ続ければ変化に打ち勝てる 自信を持ちおしゃれ提案を
大型商業施設やファッション店の乱立・同質化、人口減少、消費者の購買手段の多様化に伴い、改めて個店・路面店の「顧客を呼ぶ力」「店舗運営力」が注目されている。受け継がれてきた独自の品揃え、店舗運営ノウハウや接客を武器に、顧客の心をとらえて街に根を張る専門店3社に、自店の存在意義、将来性、ファッション業界への思いについて語ってもらった。
- オキ 沖啓太郎専務
- クールデシエル 西谷恵子代表
- カタヤマ 片山進平代表
◇買い物好きな人に照準
――ファッション消費環境は激戦。いま個店の強みをどう出し、伝えていくべきか。
顧客の生活の一部になりたい―――沖啓太郎オキ専務
沖 大阪市内の昔ながらの商店街立地で、私は3代目として家業を継ぎました。現在も親世代からの顧客が中心ですが、新しいブランドを導入するなど新規客獲得に力を入れています。
最も大事にしているのは、顧客とのコミュニケーション量を増やすことです。じっくりと接客できる路面店だからこそ、顧客と親密な関係を築くことができます。商品だけでなく、働くスタッフ含めて当店のブランディングだと考えているため、誰が何を発信しているのかを顧客に伝える努力をしています。
顧客と親密になり、仕事帰りや日常の買い物のついでにふらっと立ち寄ってもらう。何気ないコミュニケーションを含めて、顧客の生活の一部になりたいと思っています。
プロ意識を持ち、言い切る接客―――西谷恵子クールデシエル代表
西谷 今年20周年を迎えるレディスセレクト店を運営しています。近隣にSCが出来て人の流れが多少変わりましたが、開店当時の顧客が今でも来店してくれており、大きな波を受けることなく安定しています。
今の時代、SCで買う人、個店で買う人、ネットで買う人など購買手段は人によって様々。当店は個店で買い物をするのが好きな人に照準を合わせています。あれもこれもと軸がぶれると、顧客まで離れてしまうからです。個店は人対人でじっくりと時間をかけて接客ができるので、顧客の好みなどを細かく知ることができます。だから「これが絶対似合います。買うべきですよ」と自信を持って提案できます。
最近はあいまいな接客が増えているように感じます。プロ意識を持ち、言い切る接客で顧客をさらにおしゃれにしたいと常に考えています。
ずっと安定している先代の店のすごさ―――片山進平カタヤマ代表
片山 本店は商店街立地のブティックで、先代である母が仕切っています。私は男性なので、「母と同じことはできない」と店を継ぐことを避け、インショップやウェブショップなど、本店とは全く違う業態の運営に携わってきました。ただ、家業を継ぎ、本店の運営にも関わるようになり始め、ずっと安定している母の店のすごさに気付きました。
母が長年続けてきたことは、今まさに沖さん、西谷さんがお話されたこと。新しいことを試す必要もありますが、路面店ならではの強みを磨くことも重要だと感じています。
◇「かゆいところ」に手
――競合店が増える一方の中で、品揃えの考え方は。
沖 本店と位置づけるレディス店は、売り場面積が130平方㍍と広いため、豊富なバリエーションを意識しています。取り扱いブランド数は、多い時で100近くになります。親世代の顧客は一度服を買う店を決めると長年通ってくれましたが、今はファッションを扱う店が増えたので、簡単にはリピートしてくれません。大手SPA(製造小売業)と価格や商品量で競ってもかなわないので、「もう少し気の利いたもの、こんなサイズ感が欲しい」といった、顧客の欲求の「かゆいところ」に手が届く品揃えを・・・(2015/8/20付8面に掲載)
地域に根付く個店・専門店は、立地・客層こそ個々で異なりますが、専門店オーナーとして直面する課題や問題意識、そしてファッションへの思いなどは、共有できるものが数多くあります。繊研新聞は「ファッションを面白くするのは地域の個店・専門店」との考えのもと、より一層、紙面やウェブサイトでの情報発信に力を入れて参ります。ぜひご注目ください!!