《販売最前線》そごう神戸店「メゾン・ド・ロゼ」 百貨店が手掛けるライフスタイル店
横断チームでコンセプトからMD、店作りまで 「神戸の女性に喜ばれる店」
衣料、服飾雑貨だけでなく生活雑貨や食料品も扱うようなライフスタイル提案型ショップが広がっている。着るシーンなど日々の暮らし方を喚起させる提案が重視されるようになってきたためだ。ところが百貨店の場合、商品部組織が縦割りのため、部門の枠を超えた売り場作りは難しいとされる。こうした中、そごう神戸店が13年9月に立ち上げた「メゾン・ド・ロゼ」が注目されている。部門をまたいで集まった女性メンバーが「神戸の女性を元気に」「神戸の女性に喜ばれる店を」との思いを実現したライフスタイル提案型ショップで、初年度売上高が予算を上回るなど、健闘している。(吉田勧)
●外せない商品構成
メゾン・ド・ロゼは、3階婦人服のエスカレーター横にあり、売り場面積約120平方㍍。シャンデリアのある空間、ゆったりとした試着室など、主力対象のアラウンド30の女性の部屋を想定した作りだ。衣料や服飾雑貨だけでなく、婦人服フロアながら生活雑貨や食品も提案しているのが特徴だ。
衣料は「ヴェロフォンナ」「テティ」「ソーノ」「マリリンムーン」など、服飾雑貨は「マキシン」(帽子)、「ジュジュ」「ジラフ」(アクセサリー)、「リバティベル」「キラリー」(バッグ)、「トスカブルーシューズ」(靴)などを置いている。このほか、「フランジュール」のタオル、「コートノワール」のフレグランス、「樽正本店」のジャム、「パーティクィーン」のアイシングクッキー、「カスナック」のデザインシュガーなどを常設販売している。
これらは、そごう神戸店では扱っていなかったモノがほとんど。「神戸女性は手土産を持参するのが習慣。スイーツなどの品揃えは外せない商品」と同店開発のプロジェクトリーダーの谷生久美販売部婦人服飾部企画担当。一部の衣料・服飾雑貨ブランドを除き、全て買い取りで仕入れており、自社社員5人と主要取引先2社からの派遣販売員2人で運営している。
●神戸らしさで仕入れ
メゾン・ド・ロゼ開発の前提にあったのが00年ごろの神戸エレガンスブーム。「今はあのころのようには、神戸特有のスタイルを発信できていないのではないか」との思いがあり、以前から構想はあったという。その後、そごう神戸店開店80周年プロジェクトの一環として、8人の女性でプロジェクトチームが立ち上がる。「販売している人が(神戸の女性を)一番良く分かっている」(谷生さん)と婦人服ヤング販売や食品洋菓子販売担当(当時)など販売担当中心にメンバーを揃えた。神戸の街や店を見て回り、セレクトショップやファッションプロデューサーなど神戸の「業界の有名人」にもアドバイスをもらいながら、コンセプトや対象客層イメージ、想定する品揃え、売り場イメージなどを深めた。
仕入れ先の開拓と交渉は、洋菓子好き、婦人雑貨に詳しい人など消費者目線も取り入れた形で各分野を分担。コンセプトを明確にしていたこと、神戸の女性の好みを肌身で理解していることもあり、商品調達でブレが生じることもなく「ここにしかない」品揃えを実現した。こだわった店舗環境も「大満足」の状態で開店にこぎつけた。
そごう神戸店「メゾン・ド・ロゼ」 百貨店が手掛けるライフスタイル店
横断チームでコンセプトからMD、店作りまで 「神戸の女性に喜ばれる店」
●ロゼファン広げる
「普段見かけない可愛いモノが揃っている」。オープン直後から客から聞かれたのはこんな言葉だ。「母娘客やベビーカーを押した女性、そごうに来店していなかった客層もずいぶん増えました」と、メンバーで現在は同店の販売リーダーの梶原あやめさんは喜ぶ。今春夏の売れ筋は、ビジュー使いの別注カーディガン、チェックやストライプのノースリーブブラウス、「リバティベル」のキャンバストートやクラッチバッグなど。樽正本店のフルーツコンポートやジャムは「週1回は追加発注しているスター商品」と言う。
「自分たちで選んだものを自ら販売しているので、モチベーションが全く違う」と梶原さん。ハロウィーンやクリスマスには、フェイスペイントサービスやパーティーグッズのワークショップなどのイベントも実施して店を盛り上げてきたことも奏功し、1年目は目標売上高の1億円を上回った。とはいえ、まだまだ顧客は少ない。コーディネート販売や接客力を高めるとともにイベントを含めた情報発信に力を入れ、メゾン・ド・ロゼの認知度を高めること、ファンを増やすための店舗運営力の向上を追求していく考えだ。
なお、そごう・西武が今春から販売を開始した各地方店発の「リミテッドエディション・エリアモード」も、各店女性社員のプロジェクトチームで店独自の商品の企画・開発、仕入れから販売までを手掛けるものだが、「ロゼの成功事例があったからこその取り組みと自負しています」(谷生さん)とのことだ。
《主要取引先の声》
◆セレクトショップ「カリアリ」を運営するバロン(神戸)の橘川高春社長
ポップアップ店をいく度か出したことがきっかけです。1年ぐらい続いたでしょうか。その後、「神戸発信のブランドを中心にしたセレクトショップを開設したい」との話があり、ショップコンセプトなどをうかがうなどミーティングを重ねました。ポップアップ店の結果も良く、販売チャネルを広げたいとの思いもありましたので、一緒にセレクトショップを立ち上げるつもりで取り組むことになりました。今でも毎月ミーティングを続けています。いくつか改善していくことにより、もっと魅力的な店になります。充分に伸び代があると思っています。
◆サンウェル(大阪)のヴェロフォンナ事業部店舗・営業管理の高芝喜美子さん
メゾン・ド・ロゼの「ヴェロフォンナ」は、毎月売り上げを伸ばし続けています。当初は2ラックでしたが今は4ラックと棚置きと商品展開が広がり、リピーターが増えています。リボンやビジュー使い、ヒョウ柄など神戸っ子に受けるデザインであり、トータルコーディネートできる商品量があることや自社販売員を配していることも大きい。フロア内や商店街でのファッションショーやハロウィン企画での購入客へのフェイスペイントサービスなど、お客さんを楽しませるイベントも多いと感じています。