大槌町 シーサイドタウンマスト 「再開したら前へ進める」地元の声受け
2014/01/01 05:10 更新
20年前に北東北最大規模で開業した商業施設「シーサイドタウンマスト」が震災後9カ月間の閉鎖期間を経て再び帆を掲げた。津波で街は甚大な被害を受け、マストも2階まで浸水した。幸いにも客や従業員は高台のトンネルに非難をし幸い死者を出さなかったが、大槌町や隣町の釜石市の街は甚大な被害を受けた。
町民の請願署名
「もう、マストは復活することはない」と、瓦礫と化した街を見ながら誰もが思った。「被災後は食べるのが精一杯で、人の事を考える余裕はなかった」とマストを運営する大槌商業開発の黒沢敬弥社長。一度は「会社を整理しよう」と今は亡き藤井征司前社長と話し合った判断を翻させたのが町民の請願署名だった。
”マストが再開してくれれば前へ進める””マストは地域にとってかけがえのない存在”と再開を願う署名は2000筆を超えた。遠方の避難者からも次々署名が届けられる中「年内に必ず再開させる」強い決意で昼夜を問わず工事に臨んだ。退店テナントに再び声をかけ、従業員が傷つき再出店できない店もあったが新店を導入し、11年12月22日に復活を果たした。
心に響く接客で
「再開時、安否を確認し涙で抱き合う光景も見られた」とベビー子供服専門店「ホワイトアップル」の佐々木恵美子店長。マストの進退が分からず「釜石でばったり再会した客のいつお店は開くの」問いに言葉が詰まったこともあったが「こうして店頭に立てて良かった」と微笑む。大槌町で育った佐々木さんは「ここが町民の生活の場であること」をかみしめる。
ほわいとあっぷる(青森県弘前市)は本店を含めて北東北に11店を構える。マストには開業時から出店し地元のママに愛されてきた。「再開時に比べると客足は落ち着いたが、お盆には帰省客が戻ってきたことを感じる」と兼沢千里エリアマネージャー。「服がなくて困っている人もいる」と大人の婦人服コーナーを作ったら売れた。13年5月には婦人服専門店「ホワイトアップルママ」を単独出店し「これからもっと品揃えを充実させていきたい。着飾ることで明るい気持ちになってもらえれば」と、スタッフ一同今日も笑顔で客と向き合う。
マストには日用衣料専門店の「ファッションアイ」も広いスペースに出店した。地元スーパーが衣料品売り場の撤退を決めたことでオーナーが復興に貢献できればとマストの再開を機にオープンした。「被災しても浜の人の懐の深さは変わらない。良いと思った価値ある品はお金を惜しまず買ってくれる」と伊藤真樹店長。遠慮をせず「今必要なものは何ですか」と客の心に響く接客で当初予定の売上高を上回る。屈託のない販売員の元気な接客が復興を願う町民の心を元気付ける。(2014年01月01日付け本紙)
写真=大槌町になくてはならない地元商業施設「シーサイドタウンマスト」
写真=ベビー子供服「ホワイトアップル」のスタッフ
(写真左端が佐々木店長、その横が兼沢エリアマネジャー)