小さいころ、大阪・通天閣近くの串カツ屋へ父に連れられて行った時の話です。立ち食いスタイルなので、まだ背の低い私はカウンターの上がどうなっているのか分かりません。食べ終わった串を父に渡すと、新しい串カツをもらえるのが不思議で、「カウンターの上はどのようになっているのか」と、興味を覚えた記憶があります。これは、大人と子供の目線の違いを初めて意識した私の原体験です。
子供が面白がるものは、子供用に作られたものではない――。この経験則は、アウトドアブランド「ロゴス」の店づくりに存分に生かされています。「ロゴスカフェ」全店で子供の背に合わせて低い受け渡し口を設けているのも一例です。直接商品をもらえるだけでなく、スタッフが中でソフトクリームなどを作っている様子ものぞけます。従来の背の高いカウンターでは見ることができない「大人の世界」を垣間見て、子供に夢を持ってもらいたいのです。
小さな子供をターゲットにしてブランディングで成功している企業はそう多くありません。好き・嫌いの判断がはっきりしているので、彼らに気に入ってもらうのはとても難しいことです。だからこそ、それに挑戦するロゴスは唯一無二のブランドになり得ます。子供の直感に働きかけるマーケティングを実践し、ロゴスショップに親を導いてくれるようになったらしめたものです。
(ロゴスコーポレーション社長)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。