スポーツ用品業界を俯瞰(ふかん)すると、本当はこうすれば面白いのにって感じることが多い。スポンサーだから、とか色々な問題もあるんだと思いますが、ブランド同士が真っ向勝負することってないですよね。でも、人がワクワクすることって、「孫悟空」対「モンキー・D・ルフィ」のような勝負だと思うんですよ。もっと純粋にブランド同士で競い合えばいいじゃんって思います。
テクノロジーのエビデンス(証拠)ってそんなに重要でしょうか? 僕は実際に起こった〝現象〟が最強で本物だと思っています。アスリートAがアスリートBにずっと勝てなかったのに、あるテクノロジーを使うことでAがBに勝てた。まずはその現象を受け止め、企業が科学的に研究し合って、物事の良しあしを判断していくことでスポーツ科学がもっと発展していけばいいと思います。
未解明のものを明らかにしようとするから科学が発展する。きっかけは全部現象なんですよね。僕たちの場合、現象の解明はできています。でも日本の市場は、先に定義のないエビデンスが求められる。これって順序が逆だと思っていて、未解明のものを全て拒絶しているんですよ。
だから形だけ取り繕おうとマーケティング的なエビデンスが用意される。それにも違和感があります。
そのテクノロジーが確実に体に有害ならNGですけど、そうでなければエビデンスを求める前にマーケットで試したらいい。純粋に競い合えばテクノロジーはもっと進化するはずです。
(アドエルムテクノロジー代表取締役会長)
◇
「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。