ユナイテッドアローズ上級執行役員 栗野宏文さん
僕はもう20年くらい、会社ではなく、自宅で繊研新聞を購読しています。日々のファッション業界で何が起きているか、全体感をつかむためです。 普通に働いていたら、自分の会社のことしかわからない。「読んでない」っていう人に会うと、どうやって仕事に必要な情報を取っているんだろうって思います。
フットワークに自信があって、仕事で接触する人間関係の中で仕事に必要な情報を得ているとしても、それだけでは、十分じゃない。僕の場合、バイイングやデザイナーに関することならそれだけでも何とかなるかもしれない。でも自分の守備範囲以外のニュースが繊研新聞には載っている。
たとえば小売りである我々にとっては、染色加工にまつわるトピックとか、普段の仕事から遠い分野に思える記事でも、何かのきっかけで、それを知っていることが、思いがけないアイデアを生むことってある。普段から繊研を読んでいるから、気になった時、すぐどこに当たればいいか、見当が付く。
今はどんな情報でもネットで調べられるし、それってすごく便利なんですけど、ネットって、自分が興味あることばかり検索してしまって、結果としてごく狭い範囲の知識や情報しか得られないことがままある。偶然、自分の目に飛び込んでくる情報との出会いは大事で、それが新聞の役割ではないでしょうか。
個人的にこの1年、繊研の報道内容は中身が濃くなって、読み応えが増したと感じます。業界で働くうえでのスタートラインというか、服を売る立場の人間なら、繊研は読んでないと話にならない。景気の先行きが見通せない時代だからこそ、読んでないっていうのは、マズいんじゃないかって思います。