【パリ=松井孝予通信員】中国発ウルトラ・ファストファッション「シーイン」が11月5日、パリ4区の百貨店BHV(ベー・アッシュ・ヴェー)・マレの7階にフランスで初の常設売り場(約1200平方メートル)を開設する。
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シーインの仏進出が発表された10月初旬以降、仏政府やパリ市の異議表明、業界団体からの除名、11万人超の署名活動など反対の動きが続いていたが、BHVを所有するSGMのフレデリック・メルラン会長(34)が10月31日、SNSで開業日を正式に発表した。今月中には、SGMがギャラリー・ラファイエット(GL)グループから譲り受けた地方GL5店にもシーインの売り場が設けられる予定だ。現地紙によると、GLグループ側がラグジュアリーブランドとの価値毀損(きそん)を懸念し、店舗名変更を含む協議が続いていると伝えた。
シーイン進出の発表直後から、BHV内の「A.P.C.」や「フィガレ」、PVH傘下ブランドなどが撤退し、労組はストライキを実施してきた。有力投資家である仏公的金融機関も、BHVの不動産の共同取得交渉を打ち切るなど、供給網と資本面での不安が浮上した。提携先への約700万ユーロの未払い金を巡る不信も表面化し、創業170年の百貨店の経営体力が問われている。
一方、メルラン会長は仏メディアに対し、「老舗の再生には変革が不可欠」とし、シーインの若年層流入とアルゴリズム活用による在庫回転改善に期待を示す。また、EC専業を実店舗に誘導し、賃料や人件費、付加価値税を負担させることにより「同じ土俵で競う」とも語り、約5800万ユーロの自社出資を示しつつ、長期戦の構えをみせる。