ザラはなぜ強いのか インディテックスの現場に迫る④

2017/08/01 17:00 更新


《連載 ザラはなぜ強いのか~インディテックスの現場に迫る④》店頭 どう見せ、売るかは本社から IT投資でスピード

 インディテックス本社には、まるでショッピングセンターの1フロアのような一角がある。広い通りの両側に並ぶのは「ザラ」「ザラホーム」「ベルシュカ」など同社のストア業態のパイロットショップ。まもなく実店舗で販売する予定の商品をどうディスプレーし、トルソーにどんなコーディネートを着せるかを考えるのが役割だ。


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■絶え間なく変える

 世界中のどの店にも共通する商品の見せ方、並べ方が決められ、撮影データが各店舗に送られる。商品が入荷した時点で店側はそれをどう陳列するか、理解している寸法。見せ方を自社で考えるのはネット販売も同様だ。本社に専用のスタジオがあり、各業態の商品を専任スタッフが、ネット環境で見栄えするよう工夫して撮影し、オンラインストアに上げ続けている。

 テレビCMも雑誌広告も打たない同社にとってECを含む店舗は、客に自社のブランドイメージを伝えるコミュニケーションツールでもある。新規出店と並行し、主要市場で旗艦店の大型化や好立地への移転などを絶え間なく進めるのは、実店舗の存在感を現状より際立つものにするためと言える。

 店の内装もニーズやトレンド変化に合わせて定期的に変える。店舗設計も自社で行い、ザラだけで設計担当は30人いる。客の声を反映する形で、15~20カ月サイクルで新コンセプトへ内装を切り替えていく。

 ザラは昨年も新宿店を含む大型店のリニューアルを相次ぎ実施したが、改装では機能性や来店客にとっての選びやすさ、買いやすさ、環境への配慮などの改善点を盛り込む。商品だけでなく、売り場環境も随時ニーズや時代に沿って変えなければ、客に飽きられるとの思いが背景にある。

 店頭業務の効率化にも力を入れている。一例がザラで導入したICタグだ。物流拠点からの各店配送の精度も上がったが、何より、店頭で商品の在庫の有無、所在が入荷時点、営業時間を問わず、端末で検索するだけで分かるようになり、接客サービスに費やせる時間が増えた。

本社にはディスプレーを考える仮装店舗、自社ECの撮影用スタジオもある


■デジタルは手段

 ファッション企業がトレンドや景気の影響に関わりなく、業績を永遠に伸ばし続けることは実質不可能だ。好業績を続けるインディテックスも例外ではない。だが同社は、数年先を見据えた成長戦略も常に描いている。例えば、過去4年で10億 ユーロ のデジタル関連分野への投資だ。

 その一環として稼働した本社のIT(情報技術)センターは、巨大なサーバーを有し、全世界の店、EC、生産など商売に関わる動きが各部署から随時集まり、その全てが巨大ディスプレーで一覧できる。24時間、全世界とつながり、必要な手を迅速に打つことが可能だ。

 ただ、この投資は、あくまで物流、生産、企画を本社の近くで行い、店頭の売れ行きやトレンドの変化に応じて必要な施策を最短時間で具体化する、という創業当時から貫く手法を時代に合わせて更新することに過ぎない。「熱意を持ってファッションを作り売る、その精度を高め続ける」。変わらぬスタンスが強さだろう。

全世界の店、EC、生産など商売に関わる情報が全てITセンターで一覧できる

(おわり)


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