僕らが発信するソーシャルデザインには、デンマークで生まれ育ったことが良くも悪くも影響しています。
僕も弟の清史も、小学校の頃からエコロジカルやナチュラルフレンドリーについて教育を受けてきました。ヒッピーカルチャーやソフトなキリスト教が社会のベースにあるので、庶民的で左寄りの福祉国家でもあります。おかげで子供の頃から社会や環境に対する意識が高かった。
一方で、クラシックな白人社会なので、肌の色が違う僕たちは差別や偏見を受けました。社会的な不公平があり、子供の頃から怒りを感じていた。この二つのエネルギーが原点にあります。
とはいえ会社を立ち上げた04年当時は、僕はグラフィックデザイナーで、弟は美容師、何をやればいいかわかりませんでした。そんななか、コペンハーゲン大学でソーシャルクラスを研究する友人から、あるプロジェクトに誘われました。
南米一貧しいボリビアの中で、最も貧しいのはアルパカを育てている先住民。アルパカはカシミヤと同じくらい価値があるのになぜ貧しいのか。教育を受けることができず、利用され続けてきたからです。
彼らに必要な情報やデザインスキルを教えることができたら、彼らの立場は変わり収入が上がる。同時にアルパカの素晴らしさを世界に広げることができる。これだと思いボリビアへ。これが最初のソーシャルプロジェクトとなり、今のメインの取り組みになりました。
(「ザイノウエブラザーズ」デザイナー)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。