日本の繊維産業を守るために 賃上げが焦眉の課題 労務費は価格転嫁を

2025/09/10 06:30 更新NEW!


 経営者は真剣に考えなければ。甘えはもう通じない――本紙で7月28日付から8月1日付にかけ、産地で働く入社10年未満の144人の本音をまとめた。「服や繊維に関心がある」「世界でも有数の産地で面白い生地を作れる」と意欲が見られた一方、待遇面や産業の将来性などへの不安や不満も寄せられた。産業の発展には人の活躍が欠かせない。解決の糸口を探った。

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 焦点は給与水準の低さ。UAゼンセンで繊維素材、繊維加工、染色などの業種を組織する製造産業部門は「賃上げをしていかなければ他産業との格差がどんどん開いていく」と危機感を募らせる。25年賃金闘争の妥結集計(8月29日現在)では同部門全体で2.90%のベースアップとなったが企業規模や業種によって乖離(かいり)があり十分ではない。

 賃上げの原資を確保し、利益を生むためにも、企業体質を見直す必要がある。UAゼンセン製造産業部門では23年から「価格転嫁の状況等に関する調査」を実施。原材料費の価格転嫁は進む半面、労務費に関する指針の認知や理解が中小企業を中心に低い実態が明らかになった。「勇気を持って労務費の価格転嫁を経営者も現場と一緒に取り組むべき」との考えを示す。

 糸編代表の宮浦晋哉さんは「物作りが好きで、給与をあまり重視していない人がいるのも事実」と指摘しつつ、「だからと言って、やりがいに甘えてはいけない」と訴える。賃上げをはじめ労働条件の改善に着手していかなければ、人手不足による労務倒産が今後、増える可能性もはらむ。世界で評価される日本の繊維産業をいかに次世代につなぐか、今が正念場だ。

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