傘のカムアクロス "日本品質中国生産"で業績好調

2018/06/20 06:26 更新


 傘メーカーのカムアクロス(大阪府東大阪市、今中光昭社長)は自社工場による〝日本品質中国生産〟を強みに業績を伸ばしている。百貨店問屋向けなどの既存流通だけでなく、アパレルメーカー、雑貨小売業など新規販路を開拓している。

 95年創業の同社はOEM(相手先ブランドによる生産)を中心とし、百貨店、量販店向け問屋などを販路に、ピーク時9億円を計上。しかし、雑貨店などで1900円といった低価格の傘が台頭し、売り上げが落ちていった。

 そこで、5年前、ホームページを作り変え、今中社長の動画、中国自社工場の紹介など、もの作りをアピールしたところ、かなりの問い合わせが入るようになった。これをきっかけに、アパレルメーカー、スポーツメーカー、雑貨店などの取引先を開拓、個人のイラストレーターなどの小口注文も受けるようにした。既存の取引先には、素材などで新しい提案をすることで関係を強めてきた。

 一番の強みである中国・アモイの自社工場は独資で、従業員160人、月間生産量は8000ダース。現在も傘を作り続けている同社職人、渡辺政計さんが現地で15年間にわたって日本式の生産を一から教えてきた。工場の班長、副班長は渡辺さんのまな弟子で、日本品質の傘を安定的に作れるという。また、工程ごとの検査、生地は2~4枚での裁断(通常は10枚以上)、1ミリ程度の汚れでも見逃さないといった「日本では昔から当たり前だったことを徹底」(今中社長)している。

 国内の自社工房ももの作りを支えている。渡辺さんが中心となり、昔ながらの丁寧なもの作りを続けている。イラストレーターのキャラクターをプリントする「痛傘」は代表的な取り組みで、取引量が増え続けている。

イラストレーターとの取り組みによる「痛傘」(右)は国内の自社工房でつくる

 ここ数年の売上高は15年7月期6億円、16年7月期6億7000万円、17年7月期7億3000万円、18年7月期も増収を見込む。

 同社の傘の小売価格は1000円のものもあるが、中心は5000~1万円。ここ数年、原材料費、人件費などが高騰しているため、コスト削減が課題となっている。生地や骨などの部材は大半が中国製のため、安易にミャンマーなどには出られないという。自社工場への設備投資による機械化、元従業員の内職活用などさまざまな手段を講じる。付加価値の高い製品の提案を強めることも今後の課題とする。



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