知財を成長の原動力に 縫製工場のミヤモリ、〝職務発明規定〟で活用意識を醸成

2025/11/18 06:27 更新NEW!


知財戦略のきっかけとなった「服の鉛筆」

 縫製工場のミヤモリ(富山県小矢部市)が環境課題に焦点を当てた知的財産を活用し、持続的な成長を目指す。現在取り組んでいるのは、炭化した裁断くずの活用だ。同社は生産過程で発生する生地の裁断くずを炭焼きし、鉛筆の芯に再利用している。ほかの用途を広げるために研究開発を続け、特許化して新たな商機を狙う。社内では知財活用の意識を醸成する工夫を凝らし、従業員のモチベーション向上とイノベーション、会社の成長にもつなげたい考えだ。

 同社はスポーツウェアや学校体操服が主力。以前は生産過程で生地の約20%が裁断ロスとして発生していた。その一部は自社製品に活用したが、「再利用できない裁断ロスが年間で約20トンあった」という。これを炭化装置で蒸し焼きした物で協力企業とともに開発したのが「服の鉛筆」。23年度の「日本文具大賞」サステイナブル部門の優秀賞に選ばれるなど話題となった。

 同じころ、特許について調べるなかで特許庁の「アイ・オープンプロジェクト」に出合った。同プロジェクトは、企業の知財を活用した社会課題の解決に向けた事業開発の伴走支援が目的。応募すると、23年度の対象企業に選ばれた。これを契機に炭化した裁断くずの用途開発へと発展した。

大阪・関西万博で特許庁らが開催した「明日を変える知財のチカラ」に出展。9日間で約6000人がブースを訪れた

 現在、複数の研究テーマがあり、技術確立、事業化に向けて開発・検討をしている。

 社内では〝職務発明規定〟を制定して仮運用中だ。同社の担当弁理士によると、従業員が業務の範囲内で行った発明で特許を取得した場合、「権利は会社に帰属するが、従業員に適切な対価を払う」という。同規定と、従業員がアイデアを書き込むアイデアシートを活用し、開発意欲を高め、社内に知財活用の意識を浸透させようと努めている。

 「アイ・オープンプロジェクトを機に、従業員から主体的にアイデアが出てくるようになった」と宮森穂社長。「当社の企業文化や風土に合ったルールを作っていきたい」考えだ。

「一般来場者からたくさんの意見をいただき、背中を押してくれる原動力になっていると感じている」という宮森社長

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