ファッションとテクノロジーを掛け合わせた造語「ファッションテック」を掲げたイベントが盛り上がっている。主体はIT(情報技術)・テクノロジーの新興企業と投資家、そしてファッション事業者やクリエーター。狙いは、参加者間の情報交換・課題共有によるイノベーションと既存ビジネスの活性化だ。これまでファッションとIT・テクノロジーはそれぞれがコミュニティーを形成し、交流は限定的だったが、意識的に交流を図ろうとする機運が着実に高まっている。
◆目立ち始めたのは昨年
ファッションテックは別々に存在したファッションとテクノロジーを融合し、既存産業の革新や新サービスの創造を目指す動きをいう。その対象はウエアラブル端末、クラウドソーシング、仮想試着、オンラインレンタルサービスなど広く、企画、生産、販売の各段階で多彩な技術・サービスを生んでいる。
関連イベントが目立ち始めたのは昨年。米国発で世界各国へ広がった「デコーデッド・ファッション」が東京に初進出し、ハースト婦人画報社、講談社など出版社4社が「ザ・ファッションハック東京」を行った。内容は、ビジネスピッチ(短時間で行う事業プレゼンテーション)やハッカソン(ソフトウエア開発者の共同作業イベント)など。
今月4~6日の土日にまたがって東京・デジタルハリウッド大学で開かれた「ファッションテックサミット♯001」(ファッションテックサミット実行委員会)には延べ200人が参加し、ライブで動画配信された。プログラムは、3日通して行ったパネルディスカッション、ビジネスピッチと、土日の2日間でファッションデザイナーとエンジニアが協業するハッカソンとその発表・表彰。
各種催しには、三越伊勢丹ホールディングスの北川竜也特命担当部長やベイクルーズの村田昭彦取締役ICT統括、デザイナーの天津憂さん、中里周子さん、『ヌメロ・トーキョー』の軍地彩弓エディトリアルディレクターらが登壇。一方、新興企業・サービスのセンシー、バーチャサイズ、フィッティ、ラ・ファブリックなどが自らを発信した。一般参加者の中にファーストリテイリングの法華津誠CTO(最高技術責任者)、夢展望の岡隆宏社長らの姿も。
発起人であるスタイラーの小関翼社長は基調講演で「ファッション企業とIT企業はそれぞれ分断され、交流や会話が生まれにくい。イノベーションにはロス。両者が集うファッションテックハブの形成を」と趣旨を語った。
◆提携や増資のきっかけに
これに先立ち2月末には表参道で「ファッションテックナイト」が開かれた。会場のブルーボトルコーヒーには232人が詰めかけ、身動きができないほど。テックイベントは参加がIT関係に偏りがちだが、百貨店からSPA(製造小売業)・専門店、ラグジュアリーブランドまで参加。「ファーフェッチ」「エッツィー」などのビジネスピッチと並行し、人が人を紹介し合う様子が各所で見られた。
主催はITエンジニアに特化した人材サービス「フォークウェル」を運営するグルーヴス(東京・南青山)。池見幸浩代表が個人的な活動として昨年始めた「表参道スタートアップハブ化計画」を今年から拡大、第1弾としてファッションを選んだ。表参道にオフィスを構え、土地柄から顧客層にファッション関連がまとまっていたため。「熱量のあるロックな空間で、参加者には刺激になったよう。(ファッションテックは)まだこれからの市場だが、リアルな交流の場が提携や増資、採用のきっかけになる」と話す。
次回のファッションテックサミットは秋頃開催の予定。
◇ファッションテックサミットの様子